プロフェッショナルの最低要件と「年齢」の話 上 からのつづきです!
専門家は合格してからは一刻も早く、その業界のスタンダートな業務ができるようになる必要があります。
1人で基本業務をこなせるようになって、初めてクライアントから信頼される可能性がある「専門家」といえるわけです。
スタンダードな業務とは、私の業界でいえば、会計士ならば「主任業務(特定のクライアントについて、監査計画策定から監査意見表明まで、ひととおりの業務を監督する責任者)」を行って初めて1人前といえるでしょうし、税理士ならばクライアントの法人税等の確定申告書を1人で作れるようになり、ひととおりの税務相談にのれるようになること、でしょう。
このスタンダードな業務をできるようになる期間は人それぞれですが、真剣に取り組んだとしても1~3年くらいは普通にかかります。他の業界でも同じでしょう。
しかも最初は結構つらいことが多いです笑。上記の通り、専門家の業界は新人をじっくり丁寧に育てようなどという発想はほとんどありません。よい言い方をすれば「プロとして最初からある程度できると見られる」、悪い言い方をすれば「雑用を丸投げされる」ことが多くあります。丸投げの例はこちらの記事をご覧ください。
このように、専門家になるということは、まず「資格」を取り、さらに「その業界の基本的な業務が一人でできるようになること」となります。この状態で初めて、クライアントに信頼される「プロ」となるのです。
そう考えると、勉強することのチャレンジそのものが美しいのは置いておいて、やはり合格することが大事です。
そして合格したら、できるだけ早くその業界の「スタンダード」といえる業務をマスターすることが大事です。
そのためには、合格後、もしかしたら土日を使って研修に行くということが必要かもしれませんし、場合によっては今の会社を辞めるという判断をすることもあるでしょう。
ちなみに私は公認会計士の資格を取ったのちも、前から務めていた会社に3年ほど勤務しました。監査法人等に行かなくても、なんとか「業界のスタンダード業務」はマスターできると考えていました。
しかし残念ながらそれは間違いでした。私がもともといた会社は確かに財務や会計を扱う側面はありましたが、他の監査法人や税理士法人、コンサル会社等と比べると、それほどプロとしての業務はなく、会計士として「スタンダードな業務ができる」会社ではなかったのです。この事実は認めたくなかったのですが(なんだか当時、監査法人が偉そうに見えて嫌いだったというのもあり笑)、「どうも専門家として成長できていない」という感覚が日々強くなっていったのです。
そこで私は愛着のある会社を離れ、監査法人に転職する決心をしました。
理由はやはり、まだ若いと言えるうちに、業界の「スタンダードな業務」をひととおりマスターしておきたかったからです。
さて、年齢の問題はどうでしょうか。士業を目指すのに、年齢は関係あるでしょうか、ないでしょうか。
先に触れましたが、専門家の世界は最初は結構つらいです。社会人経験があったとしても、その世界に入ると最初はわからないことだらけになると思いますし、運が悪ければいろいろ「丸投げ」され、先輩方に頼らざるを得ないことが多々出てくると思います。
あなたが仮に社会人経験が10年以上あり社会人としてはベテランだけど、士業・専門家としては新人だったとしましょう。
このときに、自分よりも非常に若い先輩に、礼を尽くして、教えを乞うことはできますか?
人によりますが、おそらく「できる」という方が結構多いと思います。プロの世界に年齢は関係ないと。
しかし、実際にそういったシチュエーションになると、私の経験上、結構きついと感じることも多いと思います笑。
もし社会人として相当なベテランでも、余裕で新人としてふるまえる、というのであれば、年齢は一切関係ないと言えるでしょう。
もしそうではない、というのであれば、なるべく若いうちに合格し、その業界に行くべきでしょう。
私はプロに年齢など一切関係ないと考えています。実際私が士業になったのも30過ぎてからですし、一人前になれたと思えたのは30代後半でした。
しかし私は、30過ぎて士業になった後、「プロとしてのスタンダード業務を身に付ける」のはけっこうしんどかった、という感想を持っています。これまでの社会人経験が邪魔することもあったし、若い先輩にどうしても教えを乞うことができなかったこともたまにあったし、何より膨大な「丸投げ」が、肉体的にしんどかった笑
そういう意味では、若いにこしたことがない、ということが言えるでしょうか。
結局のところ、自分次第なんですが笑。
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