「社長」と「財務分析」-会計道(カイケイドウ)-④

会計関連職業「コンサルタント・CFO編」からの続きです!

この項では、簿記・会計を扱う職業をざっと見て、それぞれどのような勉強をすればいいか考えています。

そして今、会計専門家ではないけど、会計を道具のひとつとして扱う職業に着目しています。

前回、コンサルタント&CFOに着目しました。

今回は「社長・経営者・マネジメント」です。

社長は簿記・会計をどの程度知っているべきでしょうか?これは結構難しい問題です。

私はキャリアの序盤、中小企業の金融コンサルに従事し、本当にたくさんの中小企業社長にお会いしてきました。

まず間違いなく言えるのは、社長は「簿記」には詳しくなくても全く問題ありません。

つまり、仕訳したり、元帳に転記したり、試算表を作ったりといったことができるようになる必要はありません。

私が知っている社長はほぼ簿記はできません。

では「決算書」の理解はどうでしょうか。

私の感覚では、自社の決算書の内容をしっかり把握している社長は、2~3割といった印象です。

平均的には大体次のようなイメージでしょう。

損益計算書に関しては、売上額はだいたいわかる。粗利もおおよそ。しかしそれ以外はほぼ把握していない。最終的に黒字or赤字になったかはわかる。

貸借対照表はほとんどわからない。

私は社長がこのような状態でも、ある程度は仕方ないと思っています。

なぜなら、社長が扱うべき「経営」という範囲は非常に広いからです。

営業、購買、人事、総務、IT、法務・・・会計は会社を構成する要素の一つにすぎません。

とはいえ、決算書は自社の経営成績を表す通信簿のようなものであり、社長も重要なところを理解しておくことは大事だと思っています。

なぜなら、自社の現状を把握しておかないと、将来の戦略を立てられないからです。

仮に、自社の売上が100万円としましょう。そのとき、50万円のコピー機を買ってはいけませんね。自社のビジネスにとってあまりにも大きすぎる投資です。しかし、実際にはそういうことが起きてしまうのです。

これはマネジメントが現状を把握していないことが最大の理由です。もしくは現実離れした計画を立てているか。例えばそのコピー機を買うことで利益が2倍になるとか。

そんなの周りが止めるでしょ、と思うかもしれませんが、そうは行かないのが経営の難しいところです。特に中小企業では社長が絶対権力を持っている場合が多く、周りは何も言えないことが多々あります。

そういった意味では、社長は、

損益計算書に関しては売上・粗利の金額を把握し、販管費の大きなところは把握、最終利益も把握。

貸借対照表に関しては在庫・債権・固定資産の額、また借入残高、債務残高は把握。その他特殊な内容の科目も把握。

という状態が、理想でしょう。

財務分析のすすめ

社長に限った話ではないですが、マネジメントを目指す人は、日商簿記3級学習の後、いろいろな会社の決算書を見ることをお勧めします。

優良企業、危ない企業、倒産した企業。

それぞれどのような損益計算書・貸借対照表なのか。

それらを見て、なぜ優良企業といえるのか、なぜ倒産してしまったのか、会計に詳しい人に聞いてみましょう。

ちょっと調べればいくらでも事例は出てきます。

それらを見て、「財務分析」をしてみるのをお勧めします。後にこのブログでも取り上げたいと思います。

その際、同じ会社の決算書を数期並べてみるのがポイントです。

優良な企業であれば

・黒字を出し続けている(税金をしっかり払っている)

・債務が少ない

・純資産が大きい

反対に倒産してしまった企業は

・赤字が続いている

・債務が大きい

・純資産が小さい

ということは気づくと思います。ではなぜそうなったのか。

時代が変わっているのに旧来の商材に固執していないか?

会社規模に見合わない投資(=固定資産の増加)をしていないか?(さっきのコピー機の例)

しかもそれを全て金融機関からの借入(=債務の増加)に頼っていないか?

といったことが見えてくるはずです。

残念なことに、日商簿記3級を学習しても、学習内容はおそらくあっという間に忘れてしまいます。簿記とはそういうものです。

私のおすすめは、3級を学習したら、定期的に他社の財務分析を行い、科目を見て「これはどういう処理だったかな」と思い出すことです。

3級を理解しているのであれば、少なくとも貸借対照表・損益計算書の作り方は理解しているはずです。

減価償却費や貸倒引当金なんかも理解しているでしょう。

そのあたりを常に覚えておくためにも、定期的な財務分析はおすすめです。

社長やマネジメントを目指している人は、会計以外にも必要なことがたくさんありますが、会計に関してはまずは上記を行っておけば十分ではないでしょうか。

  • 3級合格後、詳しい人に聞きながら財務分析を行い、将来の自社決算書のイメージを持つ
  • 財務分析で出てきた科目の処理を思い出す

もちろんわからない科目は無視してよいです。本来財務分析は2級合格後に行いたいところですが、とりあえず社長は3級で十分でしょう。後にその方法もご紹介します。

CFOもそうですが、マネジメントは、他人に自社を説明する、ということは非常に重要です。

会計は英語で「accounting」といいます。「account for」とは説明すること。「accountability」とは「説明責任」を表します。つまり会計とは本来「他人に説明すべきもの」なのです。

理想は、トップマネジメントが自社の決算書を熟知し、社会や金融機関に説明できるようになることです!

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