お小遣い帳の限界-会計道(カイケイドウ)⑥ 複式簿記2

複式簿記とは? からの続きです!

前回、複式簿記の反対概念である「単式簿記」の例として、子供のお小遣い帳を取り上げました。さて、ここで想像力を働かせ、小学生のお小遣いから一気に「会社取引」に変換してみましょう。

さっきの「取引」を会社バージョンに変換するとこうなります。

この会社はセミナーをしている会社とでも思ってください。

金額が小さすぎる!というツッコミはナシでお願いします笑(日商簿記3級でよくあるツッコミですね)

4/1は、会社にとって大事な「売上」ですね。この売上を「いつ」「いくら」計上するか、簿記会計でもとても大事です。この売上をどう記録するか、実はいま大きな話題になっていますので後に簡単に触れたいと思います。

4/3は、微妙ですね。社長といえども会社であればこういう私的利用はやめてほしいですが…

4/10は、会社なのでパソコンという「固定資産」を買ったとしましょう(費用にもできますがここでは固定資産ととらえましょう)

4/20は、お小遣いでも会社でもあまり内容は変わらないですね。他の会社にお金を貸し付けることはたまにあります。お小遣いと違って利息を取ることが多いですが、それは置いときましょう。

4/30は、会社がお金を拾うことはないですが、このように理由不明なまま口座に入ってくることはよくありますね。

さて、それでは4月1日の取引を、お小遣い帳につけてみてください。

4/1 1000円で簿記セミナーを開催しました。1000円は5月に払ってくれるそうです。

?????

お金入ってきてない!収入に上げていいの?

まさにこれが、「単式簿記」の限界です。

いきなり大事な「売上」を、記帳することができません。

考えてみたら当たり前ですね。お小遣い帳は、「現金収入」「現金支出」といった、必ず現金が絡む取引でないと記帳することができません。

ところが、会社の取引は、いつも現金が関係するわけではありません。

会社では、この例のように、セミナーをしたというサービス提供時点と、実際に入金される時点、というのは、基本的に異なっています。

じゃあ、現金が入ってくるまで売上を立てるの待てばいいじゃないか、と思うかもしれませんが、現金が入ってくるまでに決算を迎えてしまったら、何もできないことになってしまいます。セミナーはもうしているのに、さすがに決算に何もしないのも違和感ありますね。

お小遣い帳では、売上を「掛」で計上したときに限界がきてしまう。

なぜなら、お金の出し入れである「入金」「出金」が関係する取引しか対処できないから。

と理解しておけばいいでしょう。

そこで「複式簿記」の出番、となるのです!

「複式簿記」の「複式」、これはお小遣い帳と違って、物事を「複数の側面からとらえる」意味です。

繰り返しですが、お小遣い帳は「現金」関連しか記録できません。これは取引を「ひとつの側面」からしかとらえられていないのです。それでは会社取引を記録できない、ということです。

では、会社に関係する取引は、どのようにとらえるべきか。

そのための第一歩として、次の図を覚えるしかありません。

借方・貸方ルール

色は今は気にしないでください。

けっきょくこれやるんかい!と思った方もいるかもしれません笑。

しかしこれ、本当に避けて通れないのです。

そしてこれを理解することが複式簿記理解の第一歩となるのです。

まずは、お小遣い帳と違って、取引を2つの側面から見ている、ということを感覚的に理解しましょう。

2つの側面、つまり左側(借方=かりかた)と右側(貸方=かしかた)で、なんとなく2つの側面でとらえているのだな、と理解できればいいでしょう。

あとは、これを暗記し、

  • 資産の増加であれば左の借方!逆に資産の減少であれば右の貸方!
  • 負債の増加であれば右の貸方!逆に負債の減少であれば左の借方!
  • 資本金の増加であれば右の貸方!(逆もありますが最初は不要)
  • 収益の発生であれば右の貸方! (逆もありますが最初は不要)
  • 費用の発生であれば左の借方!(逆もありますが最初は不要)

と何も考えなくても言えるようにすることがすべてのスタートとなります。

これはですね、私もかつて日商簿記3級の講師をしたときに、どうやったらうまく説明できるか、いろいろ考えました。

いろいろな例えを使って説明することもしました。

しかし、今思うのは、まずはこれをしっかり暗記することが一番の近道ということです。

最初見て、なぜ「このようなルール」なのか、おそらく不思議だと思います

その疑問に対する回答を記すと、「これが会社取引を表すのにベストだから。今のところ他に発明されていない」ということになります。

とりあえずは「お小遣い帳では限界がある」「会社取引は、お金以外の複数の視点で見る必要がある」そしてそのために「借方・貸方ルールを覚える必要がある」、と理解しておけばいいでしょう。

そしてぜひこの「借方・貸方ルール」だけは暗記してください!

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