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私は2020年11月で、公認会計士試験に合格して10年となりました。
この10年、2度転職し、さらに独立までするというかなり環境の変化を味わいました。
職種は大きく分けると経理、税務、会計監査、コンサルと4種類。
会計監査ではグローバル案件とIPOを同時に行えるという幸運に恵まれました。決して楽ではなかったですが笑
個人的にこの10年の会計士キャリアには非常に満足しています。もちろん「もっといい仕事ができたはず」という意味では満足していませんが。
最近つくづく思うのですが、専門家の世界というのは本当に終わりがありません。次から次へと新しい知識を入れないといけませんし、会計監査もグローバルの動きに合わせて恐ろしいほどやるべきことが増えています。
その一方、公認会計士の世界ははっきりいって無駄が多いです。大手監査法人も意外なほど標準化が進んでいません。理由の一つに、専門家は「閉じられた世界」にいるから、というのがあります。どんなに東証一部上場クライアントと接していても、それは表面上の付き合いであって、実際の企業がどのように動いているか、熟知しているわけではありません。また監査法人という組織自体が特殊であり、普通の会社でやるような営業や事務管理等をすることはありません(営業していると言っている監査法人勤務の会計士がいますが、たいてい通常の営業とかけ離れています笑)。つまり世間ずれしており、常識が無い。その分無駄なことをやっています。
この記事では公認会計士の光と影、と言ったら大げさですが、一般企業で働きながら公認会計士になった私が、いい年して業界に飛びこんでみて、とてもよかったこと、大変残念だったこと、をランキング形式でTOP、WORSTそれぞれ5つ挙げたいと思います。なお、前提として監査法人勤務を想定しています。
【BEST5】繁忙期・閑散期のメリハリがつく
私は一般企業勤務時代、悪く言えばダラダラ働いていたように思います。ほぼ年中、朝から晩まで、同じような会議をして、同じような客先に行って、同じような稟議書書いて(主に金融の仕事をしていました)、それを年中繰り返す。強弱をつけず、それほど難しくない作業を繰り返す毎日でした。これは他の人もそうだったという意味ではなく、もちろん私だけです。
公認会計士になり、監査法人等で勤務するようになってからは、「クライアントベース」で動くようにます。クライアントが決算を迎えるときは鬼のように忙しいですが、それ以外はやることがないほど暇になるため、長期の休みも取りやすいです。もちろん決算期の異なる複数のクライアントを担当することになると、年中忙しいということもありえますが、そうなったとしても休もうと思ったら1か月くらい休めます。
そして休むことに対して、業界的に寛容であるということも大きいと思います。極端な話、あいつは先月死ぬほど頑張ったらから今月は来なくてもいいか、という雰囲気があります。このメリハリ、というか極端に振れる働き方は結構自分に合っているので好きでした。
ただしそれは一定の仕事ができるレベルであって、新人が長期間休むのは難しいかもしれません。
【WORST5】繁忙期の長時間労働
BEST5の代償です。私が監査法人新人のとき、海外子会社50社を持つグローバル企業の担当に割り当てられました(その規模は珍しくないですが、私が所属していた部署はベンチャー企業のクライアントが多かったので、その部署の中ではトップクラスに大きい会社でした)。
この会社の期末監査は本当に地獄で、今でも覚えているのですが、4月1週目から、5月の2週目くらいまで、ほぼ毎日ぶっ通しで朝9時半から夜11時くらい(たまに終電無くなるくらい)まで監査を行います。ゴールデンウィークなど存在しません。
今にして思えば、そんな滅茶苦茶なスケジュールを組む必要はなく、しっかり事前にクライアントと論点を整理するなりしておけばよかったのですが、当時はクライアントと対立気味で、決算が締まった4月以降に喧々諤々の議論が始まるような状況でした。それで毎日のようにクライアントと喧嘩腰の議論をし、作業が遅れたり処理が変更になったりして無駄な時間が発生していました。
現在はしっかり期末前に論点整理のミーティングをして、4月以降に揉めることは無くなっており、その結果大体夜8時には終了、土日もほぼ休んでいます。
はっきり言って当時の責任者が甘かったと言わざるを得ません。しかし新人でチームに入っている以上何も言えずにこのスケジュールに従うのみでした。このように「無駄」と言ってもいい長時間労働が発生することがあります。
世間はゴールデンウィークで楽しそうなのに、毎日ボロボロになりながら長時間作業を行っているため、この業界に入ったことに疑問を持つことすらよくありました。
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