公認会計士の光と影② ~BEST4、WORST4~

前回の記事 公認会計士の光と影①

「公認会計士の光と影」では、一般企業で働きながら公認会計士の業界に飛び込んで、とてもよかったこと、大変残念だったこと、をランキング形式で挙げています。もちろん全て個人の主観です

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  • BEST5 繁忙期・閑散期のメリハリがつく
  • WORST5 繁忙期の長時間労働

今回はBEST4、WORST4です!

【BEST4】「チームでの取り組み」と「リスクアプローチ」の習得

私は一般企業に勤務している時、ほとんど個人で動いていたように思います。お客さんは個人についていたので、一人で客先に行って、一人でヒアリングして、一人で融資推薦書を書く。また他の業務もせいぜい数名でイベントを仕切ったりといった程度で、もちろんある程度の全体の仕切り等はやっていましたが、チームマネジメント等それほど深く考えていたわけではありませんでした。また仕事の重要性等特に考えず、とりあえず目の前にある業務を終わらせていました。

しかし公認会計士、特に監査法人の世界では、チームで分担して監査を行うことが非常に重要になってきます。割り当てられた科目は全て自分の責任で資料依頼、ヒアリング、検討、文書化(調書化)、審査対応が必要になります。大きな会社であれば当然検討科目も多いので10人以上が配員される場合もあります(大きな銀行だと監査チームは100人くらいいると聞いています)。

さらに、監査特有の方法として「リスクアプロ―チ」という手法があります。

それは簡単に言うと「大事なところにリソースを割き、大事でないところはあっさりと終わらせる」。これ、当たり前に聞こえるかもしれませんが、実際やってみると難しいです。

例えば、会社に1000円の現金があるとしましょう。それを期末にちゃんと数えることって大事ですか?

1000円くらい、別にパスしてもいいでしょ、と思うかもしれません。

この問いの正解は「その会社の売上が1万円だったら、現金1000円は重要なので、数える」です。

つまり、会社全体から見て、重要か否かを判断し、取り組み方を決めるのです(量的重要性)。

さらに、全体から見て大して重要でなかったとしても、その会社で現金盗難が多発していたらどうでしょうか。

仮に1000円しかなかったとしても、それは不正が行われている可能性がある科目なので、数える必要があります(質的重要性)。正確にはしっかり「現金が管理されているか」を確認することとなりますが。

極端な例を出しましたが、何に重点的に取り組み、何をあっさり終わらせるか、これを決める(=リスクアプローチ)という手法はいろいろなものに使えると思いました。

もちろん、最初にリスクを絞るために、決算書をはじめとしたいろいろなドキュメントを使って、検討することになります(リスク評価)。これは豊富な経験が必要ですが、この作業をたくさん行うことで、重点領域に人員を適切に投入する、というマネジメントができるようになります。さらに業界や企業の特性を見て、こういうリスクがあるな、というカンが働くようになります。

監査法人に入るとしたら、この監査計画および人員の配置、全体のマネジメントを行う「監査主任業務(インチャージ)」までやることをぜひおすすめします。これをやらずに監査法人を抜けてしまうのはもったいないでしょう。

東京CPA会計学院

【WORST4】監査法人は組織として若く、未熟な面がある

なんとも無茶なタイトルです笑。しかし私はこれにずっと苦しめられていたような気がします。

「組織として若い」とはどういうことか。

監査法人に勤務する会計士は、年齢がものすごく若いです。下手したら19歳の方もいます。管理者層(マネージャー)も早くて20代後半の方がいます。最上位のパートナーも30代後半でなっている方がいます。

年齢が若い=即未熟などというつもりはありません。この話で思い出すのがサッカーフランス代表のムバッペ。彼は2020年現在21歳ですが、すでにワールドカップ優勝、CL準優勝、リーグ優勝、さらに数々の個人タイトルを取得しており、大舞台での経験値はもはやベテランを凌駕していると言えます。このようにいろいろな経験を積んで実績もあれば、年齢など何も関係ないでしょう。

翻って監査の世界は、お客さんは企業なので、ビジネスをよく理解している必要があります。特にIPOを担当するときはこれが重要です。この会社のビジネスが本当に世の中に受け入れられ、監査に耐えうる組織になることができるかどうか、見極める必要があります。

この点、監査しか経験のない若い組織が対応するのにかなり苦労をすることが多いです。

つまり、残念ながら若さとビジネス経験の無さから、ビジネスをあまりわかっていないことが多く、それゆえに残念な判断をしてしまいます。

例えば、どう考えてもダメそうな会社とIPO準備の契約をしてしまい、その結果まったく監査ができず、会社と揉め、チームメンバーが病んでしまう。

私は一度若い上司と揉めたことがあります。

そのベンチャーは私から見て明らかにダメな会社でした。しかしその上司は「絶対IPOできる」と根拠なく言い張り、その上のパートナーも巻き込んで契約してしまいました。その後その若い上司はあっさり退職しました(よくあることです笑)

残されたメンバーは本当に大変でしたが、結局半年後「監査不能」ということで契約解除となりました。投入された3名の1000時間近くが無駄になりました。

決算書を見ても明らかに上手く行っておらず、会社の管理体制もどう考えてもダメなのに、それがわからない、というタイプが結構います。

会計基準には詳しくても、実際の会社がどういうものか、理解していない。厳しい言い方をすれば「お勉強ばかりしてきた」のでしょう。

こういうことが立て続けに起きると、モチベーションが無くなってしまいます笑

東京CPA会計学院

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