さて、前回までで売上、交際費、固定資産の購入を見てきました。

この図が出てくるのはこれまでです笑。なんとかこの図までは理解していただければ、と思います。
さて今、3つしか取引が無い状態ですが、この会社、しっかり決算書が出来ていますね。

それは当然で、仕訳が一つでも入ると、決算書を作ることができるのです。
さて、この会社ですが、あなたは優良企業と思いますか?それともダメな企業と思いますか?
ちょっと考えてみてください。
この会社、一般的には優良企業とされるでしょう。
なぜなら、損益計算書を見るとわかりますが、利益をものすごく出していますね。
売上1000に対して利益900。利益率は90%(900÷1000)です。
もちろんまだ他の費用(給料とか)が入ってきていないため、そう見えるだけなのですが、あくまでも「現時点」では利益をたくさん出している、いい会社ですね。
貸借対照表を分析するのはまだ難しいですが、以前利益剰余金は資本金の一種と言ったのを覚えていますか?
利益剰余金、つまり資本金が貸借対照表に占める割合を見てみるとどうでしょう。
貸借対照表の合計は借方も貸方も1,500。つまり総資産は1,500と表現します。
そのうち資本金(=利益剰余金900)が占める割合は、900÷1,500=60%。
これを自己資本比率と言います。自己資本比率60%は悪くない数値です。
現時点であまり深く理解できなくても問題ありません。後ほど財務分析のところでしっかり見ていきます。
いずれにせよ、この会社を現時点でパッと見て、「いい会社だね!」という判断をすることが多いと思います。しっかり黒字も出していますしね。
しかし、よく考えてみてください。この会社、大事な何かがありませんね。
何かが欠けています。
それは現金です!
現金が1円もありません笑。
当然ですが、現金が無いといろいろ支払いができず、会社はピンチです。なんでもかんでも後払いはできないでしょう。
しかしこの会社、なぜ現金がないのでしょうか?
それは、この会社を作ったときに資本金が0円だったということも関係しています(注:実際は最低1円以上必要。現実には300万以上用意することが多い)。
しかし現金が無い最大の理由は、セミナーを開催して1000円売上げたときのお金がまだ入ってきてないからですね。
セミナー代金1000円は「売掛金」というよくわからない状態で計上されていますが、これがお金に変わらないと会社は回らないわけです。
そこでこの会社の当面の課題は、この1000円を、しっかりと早めに回収することでしょう。
相手が夜逃げしたら…考えたくもありません。
この例はかなり極端ですが、このように一見優良企業に見えるけど、実態は現金が不足し、けっこうヤバイ状態、という会社は結構あります。
損益計算書や貸借対照表を分析する際は、単に比率だけをみるのではなく、しっかり色々なところを見ないといけないわけですね。
4月取引の続き
さて、4月取引の続きを見ていきましょう。

4/20、これけっこう難しいですね。
お小遣い帳パターンだと「道でお金を拾った」に相当するものでした笑
さすがに会社はお金を拾ったりしませんが、このようによくわからない状態でお金が入ってくることは決して珍しくありません。
どのように記録すべきでしょうか。
また借方貸方ルールを思い出してみましょう。

いま、会社には、理由が不明だけど、500円というお金が入ってきたことは間違いありません。
会社の「資産が増えた」。理由が不明なのでちょっとひっかかるものがありますが、預金という資産が増加したということはいえそうです。
預金と言う資産の増加は借方ですね。
問題は貸方。貸方=収益の発生=「売上」でいいでしょうか?
売上ではありませんね。4/1以後、セミナーをやっていないのに、売上としてしまうのはよくありません。
答えを言ってしまうと、「仮受金」という負債の増加です。
「仮受金」とは名前の通り、「仮」の状態を表すものです。
いま理由はわかっていないのですが、いずれ、なんで入金されたのか突き止める必要があります。
もしかしたら社長が内緒でこっそり何かやったのかもしれない。
でもとりあえず今は、理由がわからないので、「仮受金」にしておく、というわけです。
(借方)預金500(資産の増加)/(貸方)仮受金500(負債の増加)
仮受金が負債というのがピンとこないかもしれませんが、将来何か違うものに変更しなければいけない義務、ととらえておきましょう。負債と義務、簿記では同じように扱います。
ここでのポイントは「売上」といった収益の発生ではないということです。
収益の発生ではないということは、損益計算書にはのらない、ということです。
よくわからない状態では、損益計算書にはのせない。仮に売上としてのせてしまうと、他社との売上比較ができなくなりますね!
会社にとって売上という科目はとても重要なのです。
「いやーうちの会社1500の売上あるけど、500はよくわからないんだよねー」という会社は嫌ですよね笑。
まとめ
- どんな会社でも財務分析はできる。利益率や自己資本比率でだいたいわかる
- 比率だけでなく、本当に現金があるか等もしっかり見る
- よくわからず入ってきたお金は「仮受金(負債)」。「売上」ではない
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