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さて、前回までの取引は下記となります。

本記事では最後の取引を見て、4月の決算を締めてみましょう。
その前に、前回の復習。当社は利益はあるのですが、現金預金、つまりキャッシュが不足していました。
なぜキャッシュが不足しているかと言えば、資本金がゼロだったということのほか、売上げた金額をまだ回収していない、という理由でした。
そして前回(4/20)、幸か不幸か、よくわからないまま入ってきたお金がありましたね。
(借方)預金500(資産の増加) /(貸方)仮受金500(負債の増加)
という仕訳を切りました。これをまだ損益計算書・貸借対照表に追加していませんでしたので追加してみましょう。
この取引以前の貸借対照表・損益計算書は次の通りでした。

これに前回の仕訳
(借方)預金500(資産の増加) /(貸方)仮受金500(負債の増加)
が加わると、次のようになります。
損益計算書

損益計算書は「変化なし」です。今回収益と費用は発生していませんね。
貸借対照表

一番上が追加されているのがわかるでしょうか。
項目を上からどういう順に並べればいいのか、気になると思いますが、現時点では適当で構いません。
一番上に、資産である預金が借方に、負債である仮受金が貸方に追加されているのがわかりますね。今回追加した仕訳のとおりです。
これまでの「借方・貸方」ルールの通りです。これまでと同様、仕訳が追加される都度、決算書も新しくなっていきます(今後もずっと)。
新しくなった貸借対照表に注目してほしいのですが、前回までとの大きな違いは、「預金」が会社に存在していることです。よくわからない理由だろうが、会社に500円存在することは間違いありません。
さて、そこで4/30、最後の取引です。

最後、4/30の取引は、社長によれば社長の経営者仲間が経営するB社にお金を貸したようです。
当社もキャッシュ(現金・預金)が無いのに、交際費は使うわ、無茶苦茶なことをする社長ですね笑。こういうのを俗に自転車操業といったりします。お金があれば使う、無ければ借りる、的な。
前回の記事で見た通り、当社は利益こそ出していますが、キャッシュが不足している会社、でしたね。
そして幸か不幸か、今は預金があります。なので、貸そうと思ったら貸せます。で、社長、貸してしまいました笑。
仕訳をしてみましょう。
(借方)貸付金100(資産の増加)/(貸方)預金100(資産の減少)
まず借方ですが、お金を他社に貸した場合は「貸付金」となります。借金の逆ですね。
B社もさすがにいずれ返すと言っていますので、これは将来戻ってくるお金です。戻ってくるということは、当社にとって、お金に換えることのできる権利、すなわち資産です。
そういえば売掛金も、いずれお金に換えることのできる権利、でした。似ていますね。
次に貸方。
預金は「資産」です。今まで資産は借方に出てきていましたが、今回初めて貸方に出ています。また「借方・貸方ルール」を思い出しましょう。

お金を貸したことで会社の預金は減っています。つまり会社の「資産が減少」しているわけです。
「借方・貸方」ルールを見ると、資産の減少は貸方。よって、預金の減少も貸方にきているわけです。
(借方)貸付金100(資産の増加)/(貸方)預金100(資産の減少)
さて、これで4月の取引を全て仕訳することができました。現時点での損益計算書・貸借対照表を見てみましょう。
損益計算書

またも変化なしです。お金を貸す取引は、収益・費用はどちらも出てきませんでしたね。
貸借対照表

預金のところは、500から400に減っていますね。
借方(資産の増加)で500入ってきた預金が、貸方(資産の減少)で100減った。
ということは結局、現時点で500-100の400が、会社に残っている。
よって、貸借対照表で400となっています。実際に手元にも預金は400円あるわけです。
その代わり、「貸付金」が借方(資産の増加)として100増えています。
(繰り返しですが、科目を並べる順番は今は気にしなくて大丈夫です。)
これで4月の取引が終わりました。ここまでの流れで、もし不明点があれば、戻って確認することをおすすめします。
さて、実はいままで「複式簿記」のやり方でずっと記録をしてきました。
ここまでの取引を見て、最初のお小遣い帳との違いはいろいろあったと思います。しかしもっとも大きな違いは下記ではないでしょうか。
・お金をまだもらっていない売上
お小遣い帳→記録不可能
複式簿記→「売掛金」として記録可能
・モノを買う行為
お小遣い帳(漫画)→他と同じように「支出」として記録
複式簿記(パソコン)→「費用」ではなく「資産」として記録。損益計算書には出てこない
・お金を貸す行為
お小遣い帳→他と同じように「支出」として記録
複式簿記→「費用」ではなく「資産」(貸付金)として記録。損益計算書には出てこない
・よくわからないけど入金された
お小遣い帳→収入として記録(果たして収入なのだろうか…)
複式簿記→「仮受金」として記録。損益計算書には出てこない
大事なのは、「お小遣い帳で記録できなかった取引」も、複式簿記だと難なく記録できた!ということです。
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