複式簿記とお小遣い帳の決定的な違い-会計道(カイケイドウ)⑪複式簿記7-

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さて、前回までの取引は下記となります。

本記事では最後の取引を見て、4月の決算を締めてみましょう。

その前に、前回の復習。当社は利益はあるのですが、現金預金、つまりキャッシュが不足していました。

なぜキャッシュが不足しているかと言えば、資本金がゼロだったということのほか、売上げた金額をまだ回収していない、という理由でした。

そして前回(4/20)、幸か不幸か、よくわからないまま入ってきたお金がありましたね。

(借方)預金500(資産の増加) /(貸方)仮受金500(負債の増加

という仕訳を切りました。これをまだ損益計算書・貸借対照表に追加していませんでしたので追加してみましょう。

この取引以前の貸借対照表・損益計算書は次の通りでした。

これに前回の仕訳

(借方)預金500(資産の増加) /(貸方)仮受金500(負債の増加

が加わると、次のようになります。

損益計算書

損益計算書は「変化なし」です。今回収益と費用は発生していませんね。

貸借対照表

一番上が追加されているのがわかるでしょうか。

項目を上からどういう順に並べればいいのか、気になると思いますが、現時点では適当で構いません。

一番上に、資産である預金が借方に、負債である仮受金が貸方に追加されているのがわかりますね。今回追加した仕訳のとおりです。

これまでの「借方・貸方」ルールの通りです。これまでと同様、仕訳が追加される都度、決算書も新しくなっていきます(今後もずっと)。

新しくなった貸借対照表に注目してほしいのですが、前回までとの大きな違いは、「預金」が会社に存在していることです。よくわからない理由だろうが、会社に500円存在することは間違いありません。

さて、そこで4/30、最後の取引です。

最後、4/30の取引は、社長によれば社長の経営者仲間が経営するB社にお金を貸したようです。

当社もキャッシュ(現金・預金)が無いのに、交際費は使うわ、無茶苦茶なことをする社長ですね笑。こういうのを俗に自転車操業といったりします。お金があれば使う、無ければ借りる、的な。

前回の記事で見た通り、当社は利益こそ出していますが、キャッシュが不足している会社、でしたね。

そして幸か不幸か、今は預金があります。なので、貸そうと思ったら貸せます。で、社長、貸してしまいました笑。

仕訳をしてみましょう。

(借方)貸付金100(資産の増加)/(貸方)預金100(資産の減少

まず借方ですが、お金を他社に貸した場合は「貸付金」となります。借金の逆ですね。

B社もさすがにいずれ返すと言っていますので、これは将来戻ってくるお金です。戻ってくるということは、当社にとって、お金に換えることのできる権利、すなわち資産です。

そういえば売掛金も、いずれお金に換えることのできる権利、でした。似ていますね。

次に貸方。

預金は「資産」です。今まで資産は借方に出てきていましたが、今回初めて貸方に出ています。また「借方・貸方ルール」を思い出しましょう。

お金を貸したことで会社の預金は減っています。つまり会社の「資産が減少」しているわけです。

「借方・貸方」ルールを見ると、資産の減少は貸方。よって、預金の減少も貸方にきているわけです。

(借方)貸付金100(資産の増加)/(貸方)預金100(資産の減少

さて、これで4月の取引を全て仕訳することができました。現時点での損益計算書・貸借対照表を見てみましょう。

損益計算書

またも変化なしです。お金を貸す取引は、収益・費用はどちらも出てきませんでしたね。

貸借対照表

預金のところは、500から400に減っていますね。

借方(資産の増加)で500入ってきた預金が、貸方(資産の減少)で100減った。

ということは結局、現時点で500-100の400が、会社に残っている。

よって、貸借対照表で400となっています。実際に手元にも預金は400円あるわけです。

その代わり、「貸付金」が借方(資産の増加)として100増えています。

(繰り返しですが、科目を並べる順番は今は気にしなくて大丈夫です。)

これで4月の取引が終わりました。ここまでの流れで、もし不明点があれば、戻って確認することをおすすめします。

さて、実はいままで「複式簿記」のやり方でずっと記録をしてきました。

ここまでの取引を見て、最初のお小遣い帳との違いはいろいろあったと思います。しかしもっとも大きな違いは下記ではないでしょうか。

・お金をまだもらっていない売上

お小遣い帳→記録不可能

複式簿記→「売掛金」として記録可能

・モノを買う行為

お小遣い帳(漫画)→他と同じように「支出」として記録

複式簿記(パソコン)→「費用」ではなく「資産」として記録。損益計算書には出てこない

・お金を貸す行為

お小遣い帳→他と同じように「支出」として記録

複式簿記→「費用」ではなく「資産」(貸付金)として記録。損益計算書には出てこない

・よくわからないけど入金された

お小遣い帳→収入として記録(果たして収入なのだろうか…)

複式簿記→「仮受金」として記録。損益計算書には出てこない

大事なのは、「お小遣い帳で記録できなかった取引」も、複式簿記だと難なく記録できた!ということです。

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