前の記事 複式簿記とお小遣い帳の決定的な違い
さて、複式簿記をテーマにしています。複式簿記はまだまだ続きます。
ここまでの復習をざっとしてみましょう。
まずは「借方・貸方ルール」を覚えましょう。

この図は問答無用で覚えましょう。「なぜこれを覚えなきゃいけないんだ!意味がわらかん!」とお怒りのあなた。実は会計士も「なぜ」と言われると、シンプルには答えられません笑。今言えるのは「後でわかる」。さらに言えば「これ以上いい方法が発明されていない」。ということでまずはこれを覚えるところからスタートです。
そして、会社の取引は、すべて「仕訳」というかたちで表現しました。売上を代金後日受け取りで記録する方法は次の通りでした。
(借方)売掛金1,000円(資産の増加)/(貸方)売上1,000円(収益の発生)
で、仕訳が一本でも入れば決算書ができるのでしたね。
損益計算書と貸借対照表です。
この知識をベースに、これまで次の取引を見てきました。

この結果、4月30日時点の決算書は以下の通りになりましたね。


ここまでで不明な点があれば、随時過去の記事に戻って確認してください!
さて、4月はこれで終了ですが、この会社、5月に入り、ある不満が渦巻き始めます…
そう、この会社、従業員に給料払ってませんね!笑
なぜ払っていないか。それは「説明の都合」です!
4月に入れてもよかったのですが、最初「お小遣い帳との比較」に重点を置いていたので、給料には触れませんでした。
このように簿記の問題は「問題の都合」で、いろいろと現実離れした決算書が多いです。
これは日商簿記3級、そして2級も同じこと。
できあがった決算書を見ると「なんだこれ?」というへんてこな決算書になっています笑。上で作った決算書も相当変です。
少し脱線しますが、簿記の勉強がある程度進んだら、今度は「実際の決算書」がどうなっているか、自社や有名企業の決算書を見て確認したいですね。上場企業であれば決算書は「IR」のページで見ることができます。
簿記・会計は「実際の経済事象」を記録すること、という目的があります。
つまり実際の決算書が非常に大事なのです。
さて、話を戻して、従業員が給料を払え!と暴動を起こさんばかりとなっています。
それ以外にも5月はいろいろと取引が発生しました。

5/1から見ていきましょう。
5月1日 4/1に開催したセミナーの代金1000円が全額ようやく入ってきました。うおおおお!
興奮するのもよくわかります。この会社の先月最大の課題は、この1000円をいかに現金化するか、でした。
何事もそうですが、ビジネスと言うのは「現金化(マネタイズ)」して初めてひと安心なのです。
取引契約し、こちらがやるべきことをやれば、仕訳上は売上が立ちますが、その後相手がバックレたら目も当てられません。
(ちなみに現金と言う場合は預金も含むことが一般的です。むしろ現金でもらうことはなく、100%預金です。「現金預金」または「現預金」でセットとなります)
さて、この取引を仕訳してみましょう。
(借方)預金 1000(資産の増加)/(貸方)売掛金(資産の減少)
借方は、とてもうれしい預金の増加です。明らかに会社にとっての資産の増加ですね。
貸方は、売掛金という「いつか現預金をもらえる権利」の減少です。
現預金をもらえる権利は資産なので、これが無くなった、と言う意味で、資産の減少つまり貸方です。
無事にマネタイズできたわけですね!
さて、現時点の決算書はどうなっているでしょうか。
損益計算書はそのままです。今回の取引は収益・費用共に出てきていませんね。

貸借対照表はこうなりました。

預金がもとからあった400に、今回入ってきた1,000を合わせて1,400になっています。
逆に売掛金は、もとからあった1,000が一気になくなって、ゼロになっています。
今回は、貸借対照表の左側だけで、あたかも売掛金1000が預金1000に入れ替わったようなイメージですね。
ちなみに売掛金の減少=資産の減少なので、「貸借対照表の貸方」に売掛金は出てこないのか、と思うかもしれませんが、基本的には出てきません。必ず左の資産側にある残高を減少させるパターンとなります。残高に500しかないのに1,000減らすなどということはありません。
売掛金が貸借対照表の貸方にあるとしたら入力ミスとか、何かの間違いが発生している可能性があります。もしくは来月の取引をあらかじめ入れているとか。混乱するのであまりよくないですが…。
仕訳を切るたびに決算書も変わる。これは今まで通りであり、今後もずっとです。
この会社、この時点では、一気に優良企業になりましたね!総資産2,000(貸借対照表の合計)のうち、キャッシュが1,400もあるのです。
まとめ
- ビジネスはマネタイズが重要
- 売掛金を回収すると、資産の増加(預金)と資産の減少(売掛金)が同額発生
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