売掛金の回収=マネタイズの重要性-会計道(カイケイドウ)⑫複式簿記8-

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さて、複式簿記をテーマにしています。複式簿記はまだまだ続きます。

ここまでの復習をざっとしてみましょう。

まずは「借方・貸方ルール」を覚えましょう。

この図は問答無用で覚えましょう。「なぜこれを覚えなきゃいけないんだ!意味がわらかん!」とお怒りのあなた。実は会計士も「なぜ」と言われると、シンプルには答えられません笑。今言えるのは「後でわかる」。さらに言えば「これ以上いい方法が発明されていない」。ということでまずはこれを覚えるところからスタートです。

そして、会社の取引は、すべて「仕訳」というかたちで表現しました。売上を代金後日受け取りで記録する方法は次の通りでした。

(借方)売掛金1,000円(資産の増加)/(貸方)売上1,000円(収益の発生

で、仕訳が一本でも入れば決算書ができるのでしたね。

損益計算書貸借対照表です。

この知識をベースに、これまで次の取引を見てきました。

この結果、4月30日時点の決算書は以下の通りになりましたね。

ここまでで不明な点があれば、随時過去の記事に戻って確認してください!

さて、4月はこれで終了ですが、この会社、5月に入り、ある不満が渦巻き始めます…

そう、この会社、従業員に給料払ってませんね!笑

なぜ払っていないか。それは「説明の都合」です!

4月に入れてもよかったのですが、最初「お小遣い帳との比較」に重点を置いていたので、給料には触れませんでした。

このように簿記の問題は「問題の都合」で、いろいろと現実離れした決算書が多いです。

これは日商簿記3級、そして2級も同じこと。

できあがった決算書を見ると「なんだこれ?」というへんてこな決算書になっています笑。上で作った決算書も相当変です。

少し脱線しますが、簿記の勉強がある程度進んだら、今度は「実際の決算書」がどうなっているか、自社や有名企業の決算書を見て確認したいですね。上場企業であれば決算書は「IR」のページで見ることができます。

簿記・会計は「実際の経済事象」を記録すること、という目的があります。

つまり実際の決算書が非常に大事なのです。

さて、話を戻して、従業員が給料を払え!と暴動を起こさんばかりとなっています。

それ以外にも5月はいろいろと取引が発生しました。

5/1から見ていきましょう。

5月1日 4/1に開催したセミナーの代金1000円が全額ようやく入ってきました。うおおおお!

興奮するのもよくわかります。この会社の先月最大の課題は、この1000円をいかに現金化するか、でした。

何事もそうですが、ビジネスと言うのは「現金化(マネタイズ)」して初めてひと安心なのです。

取引契約し、こちらがやるべきことをやれば、仕訳上は売上が立ちますが、その後相手がバックレたら目も当てられません。

(ちなみに現金と言う場合は預金も含むことが一般的です。むしろ現金でもらうことはなく、100%預金です。「現金預金」または「現預金」でセットとなります)

さて、この取引を仕訳してみましょう。

(借方)預金 1000(資産の増加)/(貸方)売掛金(資産の減少

借方は、とてもうれしい預金の増加です。明らかに会社にとっての資産の増加ですね。

貸方は、売掛金という「いつか現預金をもらえる権利」の減少です。

現預金をもらえる権利は資産なので、これが無くなった、と言う意味で、資産の減少つまり貸方です。

無事にマネタイズできたわけですね!

さて、現時点の決算書はどうなっているでしょうか。

損益計算書はそのままです。今回の取引は収益・費用共に出てきていませんね。

貸借対照表はこうなりました。

預金がもとからあった400に、今回入ってきた1,000を合わせて1,400になっています。

逆に売掛金は、もとからあった1,000が一気になくなって、ゼロになっています。

今回は、貸借対照表の左側だけで、あたかも売掛金1000が預金1000に入れ替わったようなイメージですね。

ちなみに売掛金の減少=資産の減少なので、「貸借対照表の貸方」に売掛金は出てこないのか、と思うかもしれませんが、基本的には出てきません。必ず左の資産側にある残高を減少させるパターンとなります。残高に500しかないのに1,000減らすなどということはありません。

売掛金が貸借対照表の貸方にあるとしたら入力ミスとか、何かの間違いが発生している可能性があります。もしくは来月の取引をあらかじめ入れているとか。混乱するのであまりよくないですが…。

仕訳を切るたびに決算書も変わる。これは今まで通りであり、今後もずっとです。

この会社、この時点では、一気に優良企業になりましたね!総資産2,000(貸借対照表の合計)のうち、キャッシュが1,400もあるのです。

まとめ

  • ビジネスはマネタイズが重要
  • 売掛金を回収すると、資産の増加(預金)と資産の減少(売掛金)が同額発生

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