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この10年、公認会計士として様々なタイプの専門家を見てきました。
尊敬できると思えるのは、ストイックで、ぶれないタイプ。どんなことが起こっても動じず、頼りがいがある上司が好きです♡
公認会計士の上司だと尊敬できるのは4人でした(その中には自分より8歳若い方もいます)。皆頼りがいがあってストイック。謙虚なマインドを持っています。
ただ私は上司に厳しすぎると言うと変な言い方ですが、どうも「上司かくあるべし」みたいな理想を押し付ける傾向にあるようです。そのせいか、なかなか「尊敬できる」と思える上司に出会えません。
ちなみに、ほんの少し前まで、公認会計士というのはけっこう「偉そうな」タイプが存在していました笑。
上の世代では、公認会計士の力が強かったこともあり、クライアント先であたかも「先生」のように振舞うタイプもいました。社長と世間話をし、細かいところはすべて部下に任せ、自分は悠然と引き上げる、そして部下の仕事のレビューばかりしている。自分では何も考えない。そういうタイプです。
しかし最近は本当に様変わりしたと思います。環境変化とともにクライアントの要求が厳しくなってきたのもあり、「先生」タイプはほとんど見かけなくなりました。
最近つくづく思うのですが、「会計士」というのはクライアントに何かアクションを起こしてもらわないと何もできないのです。
クライアントが動き、数字が発生して、ようやく仕事をすることができる。その意味ではクライアントファーストなのは当たり前であり、偉そうな会計士などというのは本来ありえないと思っています。
起きた数字に対してはもちろん、今後起こるであろう将来の数字に対して、正しい助言を行えるのが、本当に価値のある会計士の仕事だと思っています。簡単ではないですが。
価値のある会計士・専門家になるにあたって、必要なこと。それは「謙虚であること」ではないでしょうか。
一般的に会計士はストイックなタイプが多く、勉強も熱心です。よって基本的には「謙虚」だと思うのですが、私の印象ではどうも肝心なところで謙虚ではないように思います。
例えばベテラン。経験もあり、自信もあるのはわかるのですが、その経験を何にでも応用できると思っていることがあります。
過去に全くやったこともない業務、それから最新の暗号技術等を利用した難解なクライアントにも、自分の過去の経験が応用できる、と安易に考え、その案件をあっさり引き受け、そのまま部下に押し付けたりするのです。
新しい案件を引き受けるときは、リソースや過去の経験を考え、実際にどのようなタスクがあるか考える、すなわちリスク評価をする必要があります。そしてゴールまでの具体的な道筋が見えていない時は、慎重になるべきです。
もちろんよくわからなくても無理して引き受けなければいけない時もありますが、そのときは部下に丸投げするのではなく、自分が率先してチームを引っ張るべきなのは言うまでもありません。
ところがベテランであればあるほど、新規案件に対して甘いリスク評価をしたあげく、それをすべて部下に丸投げし、自分は何もせずレビューするだけ、といった場面が目立ちます。
大きな理由の一つに、最近のITやクラウド環境に対する根本的な理解不足があります。ITに関しては本当に平均以下の知識しかないベテラン会計士が多い。
自分は難しい試験を突破している。自分はたくさんの経験を積んでいる。
どうもこれが、「自分は何でもできる」と考える原因のようです。そして案件の難しさを過小評価してしまうのです。
専門家は確かにその分野ではエキスパートですが、他の要素が絡むと一気に世間知らずになることが多いです。例えば監査法人に勤務する会計士の大半は、労働組合や労働者代表の存在すら知りませんし、自分たちが関係する36協定がいつ誰とどのように締結されているかも知りません。そして言われるがままに黙々と働いているのです。
ITに関しても、前職がある場合を除き、平均以下の知識しか持ち合わせていないことが多いです。
そのような弱みがあることをしっかり意識して、自分に何ができるか、何ができないのか、しっかりと見極めること。自分が何でもできると思わないこと。つまり謙虚であることが必要だと思っています。
実はかくいう私もそれなりに幅広い業種の経験をしていますので、一時期何も考えずに何でも引き受けていました笑。
しかしそれは本当に危険です。新規案件に対して一度大きな失敗をしたのですが、それは自分に謙虚さが足りなかったからでした。それ以降、新規案件に対してはしっかりと「リスク評価」をするようになりました。
・過去に経験はあるか
・リソースはあるか
・経験がない場合、経験があるメンバーに助けてもらえるか
・ゴールまでの道筋は見えているか
・(見えていない場合)これはどうしても引き受けなければいけない案件か。その理由は?
これらをすべてドキュメント化し、関係者と共有して納得いくまで議論します。
最低限、これくらいはやるべきでしょう。
甘いリスク評価だけで引き受け、部下に丸投げして、自分は矢面に立たないなど、あってはならないことです。
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