前の記事 「業務基礎学習」の決め方
「業務基礎学習」ではまず、自分が何を「なりわい」としているかを考え、仕事に関係する必須科目を抽出することがスタートでした。
私が公認会計士新人の頃、どのように「業務基礎学習」に取り組んだか思い出してみます。
新人なので通常の業務を覚えるだけでも大変なのですが、私はさらに「IPO」と「税効果」という高い壁にぶつかっていました。
IPOは「株式新規公開」のことで、上場したい会社は上場前に公認会計士監査を2年ほど受ける必要があります。
私は幸運にも新人からIPO監査のチームに割り当てられました。おそらく前々職で「中小企業コンサル」をしていたのが、アサインされた理由だと思います(IPOを狙っている会社はまだ成長していない「中小企業」が多い)。
しかしこの「IPO監査」、通常の監査と異なることが多いのです。ある意味「応用編」のような位置づけと言えるでしょう。
当時は新人ということもあり、通常の監査も覚える必要があるので、個人的にかなり大変でした。
さらに別のジョブでは、上場企業の「税効果」という科目も担当することになりました。税効果は新人にとって難易度の高い担当分野となります。おそらく前職で税務経験があったから割り当てられたのでしょう。しかしこれも当初はかなり苦労しました。
さらに、「修了考査」の学習にも取り組む必要があります。修了考査とは前回も触れましたが、会計士試験合格後3年後をめどに受ける最後の試験で、これに合格することができて初めて会計士と名乗れます。私は新人ながら前職があって、すでに試験合格後3年以上経過しており、受験資格がありました(むしろもっと前に受験しておくべきものでした笑)。修了考査は5科目13時間。かなり勉強しないと普通に落ちる試験です。
このように新人ながら勉強すべきことが山のようにありました。
とはいえ、これら「IPO」、「税効果」、「修了考査」のすべてが、業務遂行に必要なのです。これを今まさに仕事でやっているわけですので。
これらはまさに自分の「なりわい」に直結するものであり、「業務基礎学習」として取り組むべきものです。
この状況で、私は次の「業務基礎学習」スケジュールを立てました。
IPO→税効果→修了考査
そして、このサイクルを機械的に回していくことにしました。
この「機械的」に回していく、というのが大事だと思います。
IPOだけやってもダメだし、税効果だけやってもダメ。この3つのジャンルを機械的にグルグル回していく。
私は基本的に15分単位で勉強をするので、IPO15分→税効果15分→修了考査①15分→修了考査②15分、のような1時間セットを組んでいました。
「IPO」は調べてみると、「上級IPO実務士」という資格があったので、そのテキストを買いました。
「税効果」は、勉強したのがかなり昔でしたので、「よくわかる税効果!(初心者向け)」のような基本的なテキストを買いました。新人と言っても一応試験合格者なので、プロとして「初心者向け」の本を買うことはどうかと思う同僚もいるようです。しかしそんなのはしょうもないプライドだと思います。よくわからないことはわからないと素直に認め、初心者本を買うべきです。
修了考査は予備校に通うのが一般的で、予備校のテキストを使用しました。
この「IPO→税効果→修了考査」という学習サイクル、控えめに言っても完璧でした笑
仕事もかなり大変で、さらに勉強もするのはしんどかったですが、なにしろ今まさに行っている実務に直結する内容ばかりですので、インプット即アウトプットができる感覚が楽しかったです。
あまり自分で言うのも憚られるのですが笑、この学習サイクルを回したことで、他の新人よりもかなり速いスピードで成長できたのではないかと思います。
公認会計士の業務はこのように、「業務基礎学習」の科目設定がやりやすいと思います。極めて標準化された業界であり、何を勉強すべきか、ほんとうにわかりやすいのです。
しかしなかなかそうもいかない場合があります。
私が新卒で入社した会社のある部署は、何をすべきなのか、何を目的としているのか本当によくわかりませんでした笑。そんなときは前回も触れましたが、「今取り組んでいること」を素早く終わらせるにはどうすればいいか、をしっかり考え、なんとか3つほど科目を設定してみるべきです。そして上記例を参考に、機械的にグルグル回してみることをおすすめします。
「業務基礎学習」をしっかり自分で科目設定し、機械的に学習を回す習慣が付けば、1年後に本当に大きな差となって表れているでしょう。やはり仕事というのは「知識+経験」がものをいいます。どちらが欠けていてもダメなのです。