前の記事 公認会計士の未来予想図①
監査法人の未来予想は前回の記事を参照ください。
これから公認会計士に必要なことを私なりに考えてみます。なお、以下監査法人勤務を想定しています。「監査法人以外」はまた後日投稿します
- ビジネスを理解する。組織に興味を持つ。数字の背景をとことん追求し、未来の仮説をもつ
- 無駄なことに時間を使わない
- 「国内のみ専門」はきつい
- 最低限+なにかひとつの武器と言えるくらいのIT知識
- 新人・受験生は?
ビジネスを理解する。組織に興味を持つ。数字の背景をとことん追求し、未来の仮説をもつ
前回の記事の通り、これから監査法人にも標準化の波が押し寄せてきます。さらにその先にAI化が待っているでしょう。現状を見るにそう簡単にはいかないだろうと思われるものの、米国ビッグファームと提携している監査法人は否応なくこの方向に進まざるを得ないはずです。これまでやっていたような一般的な手続き、調書作成、開示チェック等にかける時間はどんどん削られていくと思います。そうなったとき、真に付加価値を持つ人材は「クライアントと一緒に未来へ進める」ことだと思います。
「会計マシーン」「監査マシーン」のようなタイプは危ないと思います。機械的に会計基準に当てはめ、機械的に調書を作っていくような仕事のやり方は、いずれアシスタントやAIに取って代わられるでしょう。
今後はおそらく、「コンサル目線を持つ監査人」が求められるのではないでしょうか。
まずはビジネスとはどういうものか理解する。クライアントの組織に興味を持つ。これだけでもだいぶ違ってきます。現状これらに興味が無いと思われる会計士がかなりいます。
そしてなぜ現状このような数字になっているのかよく考え、クライアントの議事録等をしっかり見て、よくヒアリングもしながら、将来数字がどうなるのか、会社がどういう方向に進んでいくのか、自分なりに予測してみる。
その仮説のもとで、他のクライアントの取り組みも見ながら、いまクライアントに何が必要か、考えてみる。
そういった「コンサル目線」が必要になってくると思います。
監査は二重責任(独立性を保つため、クライアントと同じ立場に立ってはならない)が第一なのは当然です。しかしそれはそれとして、海外のビックファームもコンサル的な方向に舵を切っていると思われます。二重責任の原則遵守には注意を払いながら、監査法人でも今後ますますコンサル的なサービスが増えていくと思います。
無駄なことに時間を使わない
監査法人にいるとあまり外の様子が分からなくなってしまいますが、少なくとも私がいたところはとてつもなく無駄が多かったです。社内手続きが不透明、主任が分担をはっきり決めない、現場で何をやるべきははっきりしていない、ジョブ自体のリスク評価ができていないetc…
公認会計士は付加価値の高い業務を行うべきであり、無駄に残業している場合ではありません。
「国内のみ専門」はきつい
好むと好まざるとにかかわらず、最低限のIFRS知識、またグループ監査の対応は非常に重要と思われます。このあたり、英語の問題もあって、できる人とできない人に二極化しているように見えます。しかしグローバル環境下、海外の問題を避けたまま今後も監査ができるとは思えません。まずは英語、そして海外イシューを拒否しない姿勢が必要だと思います。私がいた部署のパートナーで海外対応できる方は20%くらいという印象でした。
最低限+なにかひとつの武器と言えるくらいのIT知識
ITはIT専門家に頼ることが多くなってくると思いますが、私の経験では会計士とIT専門家に非常に深い溝があります笑。双方いまいち連携できていないのが実情ではないでしょうか。理由の一つに、会計士の根本的なIT理解不足があります。会計士にとってITは経験が無いときついですが、最低「ITパスポート」くらいの知識は必要でしょう。また何でもいいのでシステムと言えるものを作ってみるのもいいのではないでしょうか。最近はかつて考えられなかったようなDB構築が、クラウドサービスを利用することで個人でも簡単にできるようになっています。
新人・受験生は?
おそらく合格して最初の数年は非常にしんどいような気がします。
大手監査法人は前回の記事の通り、調書の標準化を始めており、いきなりこれらの管理を任される可能性があります。さらに確認状、開示チェックといった定型業務に関する共通センターとのやり取りと進捗管理。
ものすごくストレートに言えば、かなりつまらないと思います。システムもものすごく使いづらいかもしれません。
さらにコロナで、クライアントを訪問する機会が激減しています。
これは自分の経験に照らしても到底考えられない事態です。
私はクライアントのオフィス、工場、そして海外現地法人を視察して初めてそのクライアントを理解できたと感じていますし、現場で見たことと数字がつながることに初めて面白さを覚えたと言っても過言ではありません。これらの機会が無くなり、ひたすら上記のようなよくわからない管理業務ばかり最初に振ってくるとしたら、果たしてこの仕事を続けられたかわかりません。最初の数年は我慢でしょう。まずはどんな小さなジョブでもいいので一刻も早く監査主任業務(インチャージ)をやることを目指すのみ、と思います。
リスク評価と監査計画策定は今後ますます重要ですし、これができると監査は面白くなります。
受験生の方は他に余裕が無いかもしれませんが、可能であれば英語を勉強しておくことをお勧めします。受験勉強の気分転換でもいいので、1日15分でもやっていれば、後ほど大きな差となって出てきます。私も受験時代、気分転換として1日15分ほど英語の勉強をしていました。
英語の効率的な勉強の仕方は下記ご参照ください。社会人のビジネス英語勉強法
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