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税理士法人で悶々としている中、ある監査法人から誘いを受け面談。1回の面接で合格の連絡。しかしスタッフ採用で年収大幅ダウン。
実は監査法人に行くと決心する前、独立してみようかと考えました。社会人経験は10年以上あるし資格もある。だいたい監査など興味が無くまた税務の二の舞になるかも。それよりは独立して自由気ままにやった方が自分に向いているのでは。
しかし熟慮の結果、独立はしないことにしました。
なぜか。それは自分にできることが何もなかったからです。税務は中途半端。監査経験はない。その状態で具体的にクライアントにサービスできることが何一つありませんでした。
セミナー講師の経験はあり、セミナー講師をやってみるかとは思ったものの、今度は教えられることが日商簿記くらいしかない。自分って頑張っているようで、実は空虚というか、何もないんだなと痛感しました笑。
やはり「手に職」をつけなければいけない。税務では失敗した。手に職をつけ、いずれ独立したい。聞けば誘ってくれた監査法人の部署は、その後独立する人がかなりたくさんいるそうな。
ということで決心の後、ついに監査法人に入社しました!
と威勢よく言いたいところですが、前回までに記載した通り、当時の私は「燃え尽き症候群」真っただ中。ほとんど勉強もせず、精神的にかなり危うかったと思います。よく面接に受かったものです。入社時に燃え尽きていたのは私くらいでしょう。
それでも数年中断していた「実務補修所」だけはさすがに再開しました。中断を再開するとまた試験を受けるたびにお金を1万5千円くらい取られるのですが笑、もうその辺でイライラするのはやめ、最低限の勉強はするようになりました。それでもかつてのように集中して勉強するまでにはいたりませんでしたが。
私はいちおう中途採用という位置づけで、同じ部署に中途同期は他に2人。入社直後は仕事もなく、この3人でよくふらふらしていました笑。
初めて見る大手監査法人のオフィスの雰囲気は、なんだかすごかったです。
まずフリーアドレス。初体験の私はどこに座ってもOKということがとても嬉しかったです笑。しかも部屋がでかい。
さらにみんながオフィスで話している内容がめちゃくちゃ難しい。
「ここCTT(Clearly Trivial Threshold=僅少許容額)いくらだっけ?」とか「メモラン(=メモランダム)早く作ってよ」とか、なんだかすごい会話をしているな、とビビりました笑。
オフィスで実務補修所の顔見知りに会ったりします。そうすると何となく気恥ずかしかったです笑。「あれ?結局監査法人来たんだ!」みたいな。
で、その知り合いから言われました。「その部署、すごく残業多くて大変なところだよ!よく入ったね!」
この部署を仮に「T部」としておきましょう。
T部、長時間残業している人は本当に多かったです。
…なぜ私はいつも最初にこういう部署を引き当ててしまうのでしょう。残業は大嫌いなのですが。参考記事 いきなりの残業地獄-新卒社会人の公認会計士試験受験記
そうこうするうちに「新人研修」が始まります。なんと4週間もあるとのこと。
私は勉強もしていないし、監査論のことなんか忘れているし、なんだかできないやつになりそうで、監査新人研修はけっこう気が重かったです。他の新人は合格したばかりで監査論とか鬼のように詳しいんじゃないか、とビビっていました…
このとき入社後初めて、いわゆる中途ではない「新卒同期」、つまり試験合格後監査法人に即入社した人たちと顔を合わせ、一緒に研修を受けることになります。
新卒同期、若っ。まぶしい。女子がキャピキャピしている。希望に満ち溢れている(この希望が半年後には消え去ってしまうのですが…w)。
ほぼ全員が社会人新人でしょう。
くたびれた我々中途採用3人との輝きの違いが明白でした。
若い人は好きなので、若者と話できることは嬉しい反面、「この新人たちと同じ研修…」というのは若干引っかかりました笑。まあ未経験なので仕方なしです。
で、新人研修がはじまりました。
うん、簡単すぎる。退屈すぎる。いや本当に笑。
対象は完全にまっさらな社会人新人を想定しているようでした。
偉い人の長ったらしい挨拶、組織動画、仕事していくうえでの心構え、・・・
それらをいちいち班でディスカッションしながら進めていきます。
本当に勘弁してほしい。私知らない人とディスカッションするの大嫌いなので笑。
2週間くらいこのような苦行が続いたでしょうか。私は早く仕事がしたくて仕方ありませんでした。そういえば仕事がしたいと感じるのは久しぶり…
その次の2週間で、ようやく監査研修が始まります。
この監査研修はとてもよかったです。先輩方が経理部長役になり、監査で必要なやり取りのシミュレーションをする。監査証拠を集め、調書作成をシミュレーションする。非常によい現場シミュレーションになりました。何より先輩方が業務の合間を縫って、しっかり経理部長役になりきったりしているのに感銘を受けました。
私はこの研修で、適切な表現は難しいですが、自分のキャリアはとんでもなく後退したかもしれない、と感じました。
なぜなら、研修で一緒に作業した同期は初めての社会人のため、シミュレーションでも緊張してまともに話すことすらできないのです。そしてそれに対する先輩のフォローも間違いなく社会人1年目に対するようなものでした。
研修内容は私にとって非常に簡単と思えるものでしたが、他の同期は悪戦苦闘しており、最初の「できないやつになるかも…」という恐れは完全に消え去りました。
この出来事は、ド新人として見られているということが残念であると同時に、一刻も早く仕事ができるようになって、この現状から抜け出さなければいけないという強いモチベーションになりました。燃え尽き症候群が続く中、仕事でこのようなモチベーションを感じたのは久しぶりで、そういう意味では非常に良かったと思っています。 毎日簡単すぎる研修を受けさせられたことで、逆に自分の中で闘志が復活してきました。
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