中途採用者への「体育会的洗礼」!-中年の監査法人体験記5-

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私の監査デビュー戦は、ノー経験ノー研修で、難易度が高いIPO監査となりました。

ある日いきなりマネージャーから電話があり、「配員したからよろしく!あとはこいつに聞いといて」と同じスタッフで1年年次が上の方の名前を教えてもらいました。

その先輩スタッフにメールしたところ、まったく返信が無い。そして訪問日直前になってようやく「この書類を事前に見ておいてください。当日9時○○ビル集合」のような連絡が来ました。

この初現場のときの不安は今でも覚えています。だっていきなり知らない会社に未経験で行く。ほとんど事前準備もできない。さらに監査チームも誰も会ったことが無い。

確かにこっちは新人だけど、どうもやり方が乱暴だなと思わないでもなかった。もっと事前にいろいろ教えてほしかった。

後からわかるのですが、この部署、どうも体育会系らしいのです笑。

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そして運命の往査初日。20分前に到着し、入口で待っていると、4~5人の明らかに監査チームとわかる人たちが入ってきました。そのオフィスビルの雰囲気と異なり、明らかに「監査にきました」というオーラがあり、ひと目で監査法人とわかりました。私はすかさず自己紹介したのですが…なぜかみんな塩対応。「ああ」みたいな感じで、あとはその4~5人で話し始め、なんだかとても辛かったのを覚えています笑。

時間が来てオフィスに入り、ついに緊張の初現場!と言いたいところですが、何をやるのかさっぱりわかりません笑。

もそもそとPCを起動させたりしていたところ、最初に電話をかけてきた主任が「分担これだから」みたいな感じで紙に打ち出した分担表を見せてくれました。

自分の分担は「預金」「借入金」「資本金」「販管費」と書いてある。

そして主任からものすごい早口で「●●●を立ち上げて、×××を見て、△△△を更新して・・・」と矢継ぎ早に指示が飛びました。何を言っているのかさっぱりわからない笑。それでその後は話しかけるなオーラを出され…

仕方なくこっそり1年上の先輩に聞いたところ、「電子調書システムを立ち上げればよい」とのこと。しかし「電子調書システム」すら知らなかった。

これがこの部署特有の「中途採用者への洗礼」です笑。

まったく準備もなしに現場に放り込む。私はその中でもハードな現場に入れられたようです。主任もかなり厳しめでした。

ここは我慢と思い、知識ゼロから電子調書システムの使い方など教えてもらいました。まあそんなに難しくはなく、すぐに覚えることができました。

そしてよくわらかないまま見よう見まねで「監査調書」を作っていきます。

調書作成をものすごくシンプルに言うと次のようなイメージです。預金が1億円と決算書に書いてあれば、その証拠を見る。この場合はすでに先輩が銀行に送って回収していた「残高確認状」。残高確認状にはその会社がいくら預金・借入金等があるのか、銀行が書いてくれたもので、預金1億円と書いてあればOK。その旨調書に記載し、「虚偽表示なし」と結論を付す。

さらに、例えば前期預金が2億円で当期預金が1億円だったとすると、前期から50%減という「著増減」になるので、その理由を会社の担当者に聞く。そして「○○の理由で1億円減となっている」と増減理由を記載する。

「調書」作成はいろいろなルールがあり、そう簡単にはマスターできなさそうな印象でした。

基本的にはこのような作業を朝から晩までやります。当時はまだ働き方改革本格導入前。朝9時から夜10時まで毎日これをやりました。

残業が嫌いというか、長時間労働が苦手な私はだんだんイライラしてきました。どう考えても無駄が多い。私は決して穏やかなタイプではありません笑。

そして3日目にして「帰ります」宣言をして5時くらいに帰ってしまいましたw

社会人新人時代から、無駄に残るのが大嫌いなので、強引に帰るのはもはや伝統芸のようなものです。

参考記事いろんな意味で危険な新人-新卒社会人の公認会計士試験受験記3-

翌朝、前日の「突然帰る宣言」に驚いたのか、みんなちょっと優しくなりました笑。

実は、自分の仕事はいちおう終わっていました。現預金、借入金、資本金。はっきりいってすぐ終わります。実は初日に終わっていました。これ最初から研修とかで教えてくれていればおそらく3時間で終わったでしょう。2日目はみんなに合わせて残っていたのです。クライアントと話すのはお手の物。だてに様々な業種で10年以上の経験を積んでいません。

4日目、主任から大量の「レビューメモ」を頂戴することになりました。レビューメモというのは自分が作った調書に対して査閲者が「検討が足りない点」「改善すべき点」をメモの形にして調書に残すものです。調書作成者は、それを全部対応して、クリアにする必要があります。

レビューメモはおそらく30個くらいもらったような気がします笑。とはいえ、こうやって自分の不備を指摘されるのは非常にありがたいことなのです。監査というのは検討不足のまま「終了」としてしまうと、監査の責任者が重大な責任を問われることもあるからです。最近だと東芝事件などがまさにそうですね。

最初の現場は居心地の悪さを感じながらも、みんなのゴミを捨てたり新人スタッフとして働きながら、4日目にしてだいぶ慣れてきました。レビューメモもあらかたクリアにすることができました。

そしてある違和感に気づき始めます…

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