ここでは働き方のNewNormalと題し、どういった働き方がいいか、主に公認会計士業務に視点を当て、考えていきたいと思います。もちろん会計士だけでなく、過去の事業会社時代の経験にも当てはめています。以降の記事で、下記のようなテーマを扱いたいと思っています。
- STOP! 長時間労働
- 情報共有は絶対。情報を抱え込まない
- 「誰がやっても同じ結果になるべき業務」と「その人にしかできない付加価値の高い業務」の峻別
- 標準化すべきこと、絶対に押さえなければいけないことが全ての仕事に存在する
- 余った時間で「面白いこと」を考える。実行する。
- オフィス勤務も必要。週2~3日
- 中小法人はまずはIT化。同時にセキュリティ対策も
- 上位層と下位層は組織体制・業務についてしっかり議論する
- リスク評価と計画の重要性
- 上位層への提言①「ITパスポート」を取得する
- 上位層への提言②社内システムを実際に使う。自社のシステムを他社と比較する
- 上位層への提言③現場に行く
- AI利用、そのための標準化
STOP!長時間労働
私は監査法人に入る前、先輩から「監査法人は滅茶苦茶残業が多い」と脅されていました。そして今振り返り、この言葉が正しかったかどうか聞かれると「半分正しい。半分自業自得」と答えます。
まず、組織全体として「1日7時間(もしくは7.5時間)の労働時間で仕事を終わらせよう」という発想自体がありません。これは監査法人だけでなく、これまで勤務した3社全てそうでしたが…。
共通するのは、発生する事象をそのまま受け入れ、機械的に人員を割り当て、その結果人員不足となり、残業が発生する、というパターンです。
半分自業自得、というのは、全体として「長時間労働をまったく問題と思っていない」という側面があるからです。忙しい忙しいと皆辛そうに言いますが、実は辛いと思っていない。嬉しいと思っている可能性すらあります。
しかしこれからの時代、まずは週5日、1日7時間(7.5時間)の労働を厳守すべきです。別の言い方をすれば「残業前提で」仕事をすべきではないと思います。
それ以上働くのは単に効率が悪いだけ。日本の生産性の低さは報道等で言われている通りだと思います。
長時間労働をするなら、その超過労働の分だけ、付加価値を生み出さなければいけません。
しかし実際は、その労働の対価に見合う付加価値は増加していないことがほとんどです。むしろ発生すらしていないかもしれない。その結果残業代が増え給料が増えるかもしれませんが、労働に見合う付加価値は得られず、単にムダ金が流れているだけ、ということになります。それが積もりに積もった結果、金で買える価値が徐々に少なくなり、皆貧しくなっているのだと思います。
監査で言えば、長時間残業して疲弊しながら作成したドキュメント群は、本当に付加価値が高いものになっているでしょうか?
そもそも監査は、監査スタートの時点でフィーが決められており、追加請求は、不正等の特殊な事情が発生しない限りできないことが大半です。
であれば、いかに当初設定された時間で効果的・効率的に監査をするか。ここに尽きると思います。
(監査フィーが適切に請求出来ていないという問題はありますが、それはここでは触れず、後に回したいと思います。)
そしてフィーに合わせた作業時間というのは、簡単に見積もることができますので、それを適切に割り当てていくのみです。
そもそも現状、何に時間がかかっているのか。これをしっかり分析すべきでしょう。
・JSOX整備がいまいちできていないので、サンプル入手に時間がかかる
・システムが変更された結果、IT統制検証も含め、どのように監査計画を行えばいいのか、検討に時間がかかる
・海外子会社のパッケージ収集に時間がかかる
・社内手続に時間がかかる
・パートナーとクライアントの日程調整に時間がかかる
…
本当にたくさんの原因があるのですが、それらをしっかり分析することが大事です。そして組織は、この分析すら全くやっていないと感じていました。
なぜやっていないか。それは長時間労働を問題としていないどころか、むしろ勲章くらいに思っているケースも、少なからずあるからです。
スタッフ・シニアスタッフであれば、心のどこかで「残業代を稼ぎたい」という思いもあるでしょう。
しかしそういった思考停止のような、事象をありのままに受け入れ、機械的に手間をかける働き方は、このコロナ環境下、雇用も保証されない中で、完全に時代遅れというほかない。
仕事はきっちり終わらせ、余った時間で趣味を極めるなり、副業なり、将来への備えなり、勉強なり、すべきなのです。付加価値を生まない長時間労働などしている場合ではない。
言っておきながら、大手監査法人において「残業なし」で仕事を終えることは、ほぼ不可能だと思っています。
それはやるべきことが年々増加しているからです。KAMや収益認識基準などの導入の結果、いい面もたくさんあるのですが、明らかにここ最近「最低限やるべきこと」が急増しています。
そんな状況で、以降の記事では業務を効率よく行う工夫を考えていきたいと思います。
しかし、まず全員が「残業なし」で仕事をしてみる、という意識を持つことにトライすべきではないでしょうか。
以前からさんざん言われてきたことではありますが、本当にこのあたりで、長時間労働から脱却するマインドを、関係者全員が持つべきだと思います。
STOP!長時間残業-まとめ
- 付加価値を生まないまま長時間労働しても皆貧しくなるだけ
- 長時間労働の原因を組織全体で分析する
- 残業を前提とせず、1日7時間(7.5時間)労働で終わらせるのを当たり前とする意識を持つ