会計士の働き方New Normal!④ 人の仕事が無くなることは無い!

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前回「誰がやっても同じ結果になるべき業務を洗い出し、標準化して、誰にでもできるようにする」という記事を書きました。

私は過去、事業会社の経理部や大手監査法人等で同じことを提案したことがありますし、現在進行形で自分が所属している中小監査法人でも同じことを実践しています(大手監査法人では代表者直轄部署に私案をメールで送り付けたこともあります笑)。

今は役員という立場ですので、周りの理解も得られ、順調に進んでいます。周りが子育て世代となり、また法人としても効率化を重視している、という環境であることも大きな助けとなっています。

しかし、かつて平社員の立場で同じことを主張したとき、提案はほぼ一蹴されました。あるいは黙殺。まあ伝え方が悪かった面もありますが笑。

こういったアイデアに反発する根底には、AI化進展のデメリットとしてよく挙げられる「人がやることを奪っていいのか」に近いものがあると思っています。

仕事を標準化し、誰にもでもできるようにするということは、いずれその担当者はRPAやAIに取って代わられることを意味するのではないか。それはリストラにつながり、皆不幸になってしまうのではないか。

その問いに対する私の回答は次のとおりです。

「その仕事はいずれRPAやAIに取って代わられる可能性がある」、というのはその通り。可能性は大いにあるでしょう。

しかしそれがリストラにつながるか、というと全く別問題。人がやるべきことは次から次に出てくるものであり、無くなることはありません。それは歴史が証明していると思います。

洗濯機や自動皿洗い機をはじめ、家事にかける時間を劇的に改善する画期的な家電製品が登場してきました。では現在、家庭でやることが無くなっているか。むしろ増えているのではないでしょうか。所属するネットワークが拡大するにつれ増加する日々のやり取り。昔はそれほど気にする必要が無かった家族・子供のケア。プライバシー対策・安全対策など。

1980年代、ワープロを導入して年賀状を効率的にさばこうと思ったら、むしろ送る宛先や印刷のこだわり等が増加して逆に対応時間が増えた、という記憶をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

同じような話で、最近受けた営業セミナーの講師が面白いことを言っていました。

最近の営業部では、できる営業マンの実際の営業時の音声を録音し、データ化して(もちろん音声認識ツールで)、営業のポイントを全員で共有し、シミュレーションするのだそうです。

そうすることで、できる営業マンしか持ちえないと思われた営業トークの組織における「再現性」が高まり、組織全体がレベルアップすることができるそうです。

ではその結果、できる営業マンのやることが無くなったか。全くそんなことは無いそうです。むしろさらなる教育、そしてよりよい営業手法の開発に力を注ぐようになったとのことです。

できる営業マンは自分のスキルがデータ化され、皆に共有されてしまい複雑かもしれませんが、こういったことができる人材をしっかり評価すれば、モチベーションも高まり、組織もレベルアップできると思いました。

今我々がやっていることが自動化され、機械やアルバイトができるようになる可能性は大いにあります。

会計業界でも、取引を記録する「仕訳」は、銀行データ等と連動することで、預金系の仕訳は自働で記録することができるようになっています。

しかし、経理がやることがなくなる、ということはないと思います。本当に次から次に出てきます。それに取り組めばよいのです。そして新しいことは古いことの延長線なので、これまでの知識・経験が無駄になることなどないと思っています。

まずは「人の仕事が奪われる」という幻想を払しょくすること。

はっきりいって、日本の企業社会の現状においては、そんな将来のことを気にするよりも先に、標準化・自動化すべきことが山のようにあると思っています。

本当にその書類は必要なのか。本当にその仕事にそれだけの時間がかかるのか。本当にエクセルに毎回毎回手作業で入力する必要があるのか。

「人の仕事が奪われる」心配よりも先に、組織全体が、仕事の再定義に取り組む必要があると思っています。

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