前の記事 会計士の働き方New Normal!④ 人の仕事が無くなることは無い!
前回まで、「誰がやっても同じ結果になるべき業務を洗い出し、標準化する」ということを書きました。さらに「人がやるべきことはそう簡単に無くならないので、人の仕事が奪われるといった心配は無用」ということも書きました。
さて、「誰がやっても同じ結果になるべき業務」を標準化することは、組織全体で取り組む話なので時間がかかり、そう簡単にはいかないわけですが、仮にできたとして、そこで話はおしまいなのでしょうか。
実現すれば時間がこれまで以上にできるはずなので、「その人にしかできない仕事」に時間を費やすときです。監査法人であれば特別な論点検討、リスク評価&監査計画、営業といったことが該当するでしょう(個人的に適切なリスク評価と監査計画は誰でもできるわけではなく、その人の経験と判断に大きくゆだねられると思っています)。
そしてそれでおしまいかというと、決してそういうわけではないと思います。
仕事には、無駄なことも必要だと思っています。
無駄と言ってもこれまでせっかく標準化した「誰がやっても同じ結果になるべき業務」をまた属人的にスタートする、という話ではありません。
標準化というのはどうしても「マニュアル化」の方向に進んでしまいます。そうするとマニュアルから少しでも外れた場合、批判されることになり、その結果業務における自発性が奪われてしまうという危険性をはらんでいます。
違う言い方をすると、組織内で「無難」なタイプが量産されてしまうのです。
「無難なタイプ」とは、決してアウト・NGの行動はとらないものの、思い切った変革・チャレンジができないタイプを指します。
さらに、「応用力がきかないタイプ」になってしまう可能性もあります。
例えばAという業務で得た知見を、全く違うBという業務に応用する、ということができなくなってしまいます。さらに、AをA´に応用することもできなくなる可能性があります。
具体的な例を挙げると、大手監査法人で大いに経験を積んだ会計士が、小規模監査法人に転職した場合、本当に多くの改善事項を発見することができます。しかしそういった場合でも、ほとんど改善案を示さず、転職先の小規模監査法人のやり方に合わせてしまうのです。
そうなってしまうのは上司とマニュアルに従うということを叩き込まれているからにほかなりません。ちょっと工夫すれば大手のように業務を実施できるにもかかわらず、所属する組織に染まってしまうのです。
よって、「標準化」だけを推進すればいいか、というとそういうわけではないと思います(とはいえ今の日本の企業社会は間違いなく「業務標準化」を第一に考えるべきですが)。
仕事を面白くし、さらに付加価値の高い業務を実現するには、「無駄なこと」を考える必要がある、と思っています。
無駄なこととは違う言い方をすれば「突拍子もないこと」「空想」「面白そうなこと」。
業務に関係する「突拍子もないこと」「空想」「面白そうなこと」は、実現可能性が無くてもいいから、所属する全員が考えるべきと思っています。
これまで社会の革新を生み出してきたアイデアは、そういったところから出てきていることは論を待たないでしょう。
そしてそれはマニュアルや標準化の発想からはほぼ出てきません。これらは「リスクを抑える」という発想に基づいているからです。
「突拍子もないこと」「空想」「面白そうなこと」は、リスクを取るという全く逆の発想となるのです。
個人的な理想は、「週5日勤務のうち半日」といった定期的なスパンで、所属するメンバー全員が「突拍子もないこと」「空想」「面白そうなこと」を考える時間を設けることです。それはどんなに実現可能性が低くてもいい。そしてそれをプレゼンする機会を設けたいと思っています。
もちろん、「業務に関係する」というのが前提です。さらに実現するとどんないいことがあるか、実現するにはどんなことが必要かも考えてもらいます。可能性は少なくてもいいので。
今の私だったら「今の中小監査法人が、大法人に負けないくらい知名度アップする」といったことを考えます笑。
プレゼンを受ける社長や経営陣は、決してあら捜しをするのではなく自分だったらどうするかといったブレインストーミングのようなディスカッションを誘導すべきでしょう。
ちなみにこれ、人によっては本当に苦手な人もいるはず。これまでの同僚を振り返ると、おそらく半数以上の人は「やりたくない」と言いそうです笑。
しかしこういったことをやらないとすると、業務は標準化・マニュアル化する一方。生産性は改善するかもしれませんが、息苦しくなるばかりです。
どんなメンバーであれ、ぜひトライしてほしいと思っています。
大事なのは、本当に自分がやりたいことをプレゼンしてもらうことです。社長や上司に強制されて渋々考えるくらいなら、やらないほうがましです。
よって採用の際にこれを明示するくらいやるべきでしょう。当社はこういったプレゼンができる人材を重視している、と。