監査法人1年目はどん底。
2年目、「修了考査」を機に復活。
2~3年目にかけて、個人的に「なんとか役に立っている」と実感することが出てきました。
例えば中小企業コンサルの経験を活かした「IPO業務」だったり、税務の経験を活かした「税効果」対応だったり、いちおう過去システム部に所属した経験を活かした「IT統制」の評価だったり(ITに関してはIT専門家に怒られそうですが笑、少なくとも他の会計士よりシステム部の方とたくさんお話はできたと思います)。
監査も2巡目、3巡目となるにつれ、理解が深まってきます。監査は本当に積み上げ型の仕事。1年目全く分からなくとも、それほど心配する必要はありません。
修了考査が他の新人より早めに合格したのもあり、ちょっと早めにシニアにしてもらいました。これで給料に関する不満はだんだん解消されてきました。
つまり、うまくいくことが多くなってきました。
うまくいっている話ってあまり面白くないですよね笑。
上手くいった話をいろいろ書きたいのですが、どうしても自慢っぽくなるし、詳細に書くと今度は守秘義務に違反してしまう。よってあまり書きません笑。
一つ書くと、2~3年目、中国、東南アジアを中心に本当にいろいろな国に行かせてもらえました。前の記事でも書きましたが海外往査は慣れると最高です。参考記事 英語ができるといいことだらけですよ!-中年の監査法人体験記10-
早く海外に行ける時代に戻ってほしいですね。
ところで私は新人の頃から、ひとつ疑問がありました。
「なんで監査法人(公認会計士)って、強制捜査権がないのだろう、あれば楽なのに。」という疑問です。
これ、過去に結構議論になったようです。国によっては、会計士に捜査権に近い権限がある場合もあるそうです。
ご存じない方に説明すると、公認会計士は会社に「監査に使いたいので、この資料をいただけませんか」と「依頼」することはできます。しかし「提出しなさい」ということはできません。
その結果、最悪の場合、監査に必要な資料を得ることができず、粉飾を見逃してしまう可能性もあります。
これだけ聞くと、公認会計士は「強制捜査権」「資料入手権」のようなものを与えられてもいいと思いませんか?
私も新人の頃、大企業への資料依頼が本当に大変だったので、「なんでいちいちへりくだって、毎回毎回、資料を依頼しなければいけないのだろう」と思っていました。
新人が依頼しても軽くあしらわれ、対応してもらえないこともかなりあります。そのため「強制捜査権があれば楽なのに」とも思っていました。
しかし今の考えは全く逆です。強制捜査権などとんでもない。
急にものすごく大きなことを言って申し訳ないのですが、まさにこれが「資本主義」なのです。
つまり強制捜査権といったお上の権力は、資本市場には必要ない、ということです。
資本市場の中では、まず自分たちでルールを作る。そしてそのルールを尊重できるものが参加する。ルールとは会計基準だったり監査基準だったりその他もろもろ。
そのルールは一見お上が作っているように見えますが、実は「民間」「資本市場参加者」が自分たちで作ったということになっています。
そして資本市場はお上が介入すべきではありませんね。需給バランスに基づいた自発的で公正な取引価格が実現されないと、とんでもなく不公平なことが起こりうるからです。
参加したい(上場したい)企業は自分たちが作ったルールに従い自社を可能な限り透明にして、監査法人はルールに従いそれをチェックする。
自分たちが決めたルールなのですから、自分たちで解決すべき。そこに強制捜査権が入る余地はありません。
であれば監査法人は誠実に説明して、欲しい資料を依頼し、会社は必要性が理解できれば真摯に対応すべきなのです。
もちろん会社は「提出する必要がない」と判断するのであれば、提出する必要はないでしょう。
その結果、公認会計士はルールに基づき、それをどう処理するか判断する。
そういった公認会計士と会社の「やり取り」そのものが、市場から期待されているのではないでしょうか。
資料依頼は手間がかかってしょうがないですが、この手間こそがまさに資本市場で要求されている「やり取り」の神髄と思います。
監査を進める上では、毎回毎回、依頼資料の作成や入手状況のチェックに頭が痛いのですが(もちろんそのやり取りを可能な限り効率化・省力化する必要はあります)、そう考えると依頼資料担当者(大体新人)も、多少はやる気が出るのではないでしょうか。ああ、まさにいま資本主義を味わっている、と笑。
よって強制捜査権など、監査に全くそぐわないと思っています。むしろ資本市場に参入する際(つまりIPO時)に、その辺を監査法人と会社でよく話し合うべきだと思っています。
ここまで断言調で書いてきましたが、すべて「個人の主観」です笑。本記事の記載が世間的に正しいという保証は一切ありませんので、あしからずご了承ください!
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