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監査法人2年目から3年目。
1年目の「プチ心の病」を脱してからは、かなり順調に事が進み始めます。
まあ、もちろんそれなりにいろいろな困難はありましたが。
しかし1年目の大企業の海外も含めたキツイ経験を突破した後となっては、ほとんどの出来事が大したことが無いように思えてきます。
今でも思い出すのが、1年目、監査を理解していないまま、アメリカのほとんど知らない会社に行って、業務フローのヒアリングをしなければならなくなったときの絶望感。経験もなく英語も大してできず、とてもきつかった。5日間、毎日5~6回のセッションがあり、私がヒアリングを仕切るわけですが、ヒアリングが始まる前、毎回日本に逃げ帰りたくなっていました笑。参考記事 TOEIC高得点で調子こいて海外出張に行って大失敗した話
これ自体、今思えば大したものではないのですが、当時は本当に全体感がわからず、きつかった。
しかし後になって、あれ以上の絶望感は、幸いにしてあまり味わうことなく今に至っています。強いて言えば2020年、初のコロナ環境下のリモート監査も割と絶望感がありましたが、そのときほどではありませんでした。
そういう意味では、最初にヘビーと思える経験をしておくことは割とありなのではないか、とも思えます。まあ潰れる一歩手前でしたので何とも言えませんが…
さて、1年目の頃は全く面白いと思えなかった「監査」。
しかし2~3年目にかけて、だんだん面白いと思えるようになりました。
ひとつには「理解できはじめた」ということがあると思います。やはり理解できないと仕事というのは面白くないと思います。
理解するためにはやはり勉強が必要です。私は「修了考査」を機に、会計監査をほとんどやり直すつもりで真剣に勉強し、それをきっかけに仕事の理解が大きく進み始めました。参考記事 「修了考査」を愛しています。変態ではありません
公認会計士に関していえば、監査基準でも規定されている通り、「自己研鑽」というのは本当に大事だと思います。
そして監査に関していえば、もうひとつ「面白いと思えるポイント」があります。
それは「監査計画」の策定です。
「監査計画」は非常に重要です。監査の計画を立てるには、「重要なところ」に人員・リソースを割き、「重要でないところ」はさっと終わらせる、という工夫が必要です。
そもそも監査というのは、やろうと思えば何千時間でもできます。それくらい、特に大企業の監査ではやることが次から次に出てくるのです。
しかし、普通はリソースが限られているため、そんなに膨大に時間をかけることはできません。そこでルールとして、「重要なところをしっかりやる(そうでないところはあっさりでいいよ)」という考え方が示されているのです。これをリスクアプローチと言います。
例えば、売上100億円の会社で、ものすごく時間をかけて、「1万円のミスを発見しました!」というのはNGです。そんな小さなミスを発見することは求められていない。ものすごく時間をかけるのであれば、大きなミスが起こりそうなところに重点的にリソースを割くべし、というのがルールになっているのです。
「監査計画」では上記の通り、「重要なところ」に人員・リソースを割き、「重要でないところ」はさっと終わらせる、という方針で監査を終わらせるように、いろいろなスケジュールを考える必要があるわけですが、これが簡単そうに見えて難しいです。
それはそうですよね。何が「重要」かというのは、会社によって違うので結構難しいです。
もちろん「重要」の考え方についてはいろいろ決められていますが、杓子定規にやってはいけないところとなります。効率的な監査を行うための監査計画を策定するには、「重要なものの判断」についての経験が必要となるのです。
そして、これは「社会人経験」が非常に大きくモノを言う、と思っています。
社会人経験が長く、ビジネスや会社組織について理解があれば、監査について何が「重要」か、ということが良くわかると思います。
私は監査法人に入る前に10年以上の社会人経験があり、これらが監査計画を策定するうえで非常に大きく役に立ったと思っています。
3年目くらいで「インチャージ補佐」、4年目で「インチャージ」になりましたが、このポジションになると、「監査計画」策定に大きく関わるようになります。
監査というのは、個々の手続きばかりやっていると、つまらないと思っています。私が1年目つまらないと感じたのも、全体感が見えない中で、突合とか分析ばかりやっていたからです。
しかし「監査計画」を担当することで、監査の効率的な進め方がわかったし、全体感が見えてさらに理解が進み、面白いと思えるようになった。
ということで、私は、監査法人に入るのであれば、なるべくインチャージ(主任)として監査計画策定を経験してほしいし、それを経験する前に辞めてしまうのはもったいない、と思っています!