会計士の働き方New Normal!⑧自分の仕事を愛する。同時に突き放してみる

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私が事業会社の経理部にいた頃。

そこには「主」がいらっしゃいました笑。要はベテラン経理。それも複数名。

やっていることは普通の経理なのですが、その方々の業務は完全にブラックボックスになっており、その方が休んだ時は全く仕事が進まない。

全体ミーティングの時もその方々の業務の進捗がよくわからず、かといってベテランなので無下に扱うわけにもいかず、上司は恐る恐る「どんな感じですか?」と進捗を聞く。

「主」は「Aさんが、××部のB君と折衝した結果、Cさんの指示待ちで~」のような、なんとなく凄そうだけどよくわからない進捗報告をする。上司は、「なるほど、了解です」で終了。結局何なのかよくわからない笑。

これは経理あるあるだと思います。

あまりにも長く同じ分野を担当すると、業務に精通するのは大変いいことなのですが、自分だけしかわかる人がいなくなってしまう。

そうすると、その業務を知らず知らずのうちに「抱え込んで」しまう。

その業務は他の人から見てブラックボックスになる。

結果、経理部の課題が見えづらくなり、全体の改革ができなくなってしまう。

これをちょっと別の観点から見てみましょう。

その「主」たちはおそらく仕事熱心なはずです。おそらく部内でも働いている方だと思います。

仕事熱心なのは大変いいことですし、尊敬すべきことです。

しかし、もしかしたら自分の仕事に「愛着を持ちすぎている」可能性もあります。

過去の自分を振り返っても、自分が習得に苦労して、ようやくモノにした仕事というのは、達成感がありますし、それが「他人に渡したくない」という一種のプライドのようなものに変わったことがあります。

業務の引継ぎ等で、妙に強気だったり、当たりが強かったりする人がいますが(後任にやたら厳しいことを言うなど)、だいたいこれです笑。

そうなってしまうのは、おそらく自分がその業務を始めた時に相当苦労をしたからなのでしょう。何もわからないままその環境に放り込まれ、大変な思いを味わった可能性があります。

自分は習得にこれだけ苦労した。だからそう簡単に他人にわかるようにはしたくない。

これはけっこう一般的な心理なのだと思います。

しかしこのコロナ環境下、生産性が異常に低い日本において、そういったマインドはもはや百害あって一利なしとなっています。

全体の業務を最適化し、効率よく仕事を進めていく中で、どこかでブラックボックスがあっては大きな障害となるのです。経理のようにゴールが明確でやることが決まっている業務であれば、個別業務をクリアにしたうえで適正な財務報告というゴールに向かっていく必要があるのです。

これを防ぐには個人+組織で、次のことを実践する必要があると思います。

  • 個人:自分の業務に過度に愛着を持たない。突き放して考えてみる
  • 組織:自分の仕事をオープン化できる人材をしっかり評価する

個人:自分の業務に過度に愛着を持たない。突き放して考えてみる

プライドを持ってきっちり仕事をするのはいいことですが、同時に、自分の仕事がブラックボックスになっていないか、本当に今ほどの時間がかかるのか、本当に自分がやる必要があるのか、常に意識することが必要です。エクセルで頑張って作っている場合は要注意でしょう。作りこみすぎて他人が見ても意味不明なものになっている可能性があります。マクロ満載の壮大なエクセルに残念ながら組織的な価値はほとんどありません。誰が見ても修正可能なものに作りかえるべきでしょう。

組織:自分の仕事をオープン化できる人材をしっかり評価する

仕事を抱え込む心理は、だいたいのところ組織内の評価に行きつきます。これは自分だけしかできない仕事、というのがあれば安心するものです。しかし高いレベルならともかく、誰でもできる仕事を抱え込まれると本当に困ります。よってそういう人材ではなく、上記のような自分の仕事をオープン化できる、そういった改革ができる人材をしっかり評価する制度が必要です。こういった制度がないと本当に誰もやりません。

まあ、こういったことを進めていくと「自分の価値とは何か」、だんだんわからなくなってしまいます。それはそうですよね。標準化とは言ってしまえば属人化を無くすことにあるのですから。だからこそ、私はこういった標準化を進めていくと同時に、組織の中で「自分ならではのアイデア」を考える時間が必要だと思っています。参考記事 会計士の働き方New Normal!⑤ 仕事には「無駄」も必要!1

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