会計士の働き方New Normal!⑩「現実をありのままに受け入れる」のはNG!

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よく聞く「現実をありのままに受け入れるべし」というフレーズですが、果たして正しいでしょうか笑。

仕事に関していうと、これは半分正しく、半分誤りだと思います。

半分正しいというのは、現状のリソースや状況を冷静に把握し、やるべき仕事量を的確に見定めるということは当然に必要となる、という意味です。ここで変に自分やチームの能力を過大評価したり、やるべき仕事量を過小評価したりすると、大変なことになってしまうでしょう。その意味では現実をしっかり受け止める必要があります。

しかし、では現実を受け止め、新しく発生する仕事に対して機械的にリソースを割く計画を立てていいか。

これはNGと思います。

しかし現実問題として、「これだけ仕事があるので仕方ないでしょ」と開きなおり、残業前提で仕事を割り振る管理職が多いのではないでしょうか。

今あるリソースで、決められた時間でこなすために、現実を変えるくらい工夫をすることが必要です。

例えば今の人員で、2倍の仕事量をこなさなければいけなくなった。

これまでの組織を振り返ると、このような場合、単純に「2倍働け」という指令をもらっていました笑。そして残業をたくさんしても問題とならないことが多かった。

しかしそのような働き方はもはや、思考停止の最たる例です。

管理職や組織は、機械的にリソースを割り当てるのではなく、現実を変えるくらいの工夫をすべきでしょう。もともとの仕事が本当にそれだけの時間がかかるのかもっと効率的なやり方はないか他に画期的な方法はないか、考えるべきです。これが管理者の責任と思います。

そういう工夫をせずに、新しく降ってきた業務に対して機械的にリソースを割り当てていくと、到底時間内に終わらず、残業対応となってしまいます。

このように残業を前提とした働き方を当然としているのが、日本の組織の残念な現状だと思います。

過去を振り返ると、事業会社の社内システム部在籍時も同じような話がありました。当時は業務システム開発の黎明期。とにかく次から次へとシステムが開発されている。そのような環境にあって、システムごとに担当者を機械的に割り当てていくと、当然パンクすることになる。こうして書くと自明の理に見えるのですが、組織ではそういったことが割と当たり前のように行われてしまうのです。その結果、一時期、システム部の月の一人当たり平均残業時間が100時間を超えていました笑。そして働いている側は、あまりその状況を異常とは思っていなかったようです。現実をそのまま受け入れすぎて、そして忙しすぎて、思考停止になってしまっているのです。

このときは他にもシステムごとの担当者があいまいであり、なぜか部署フルメンバーで各システムの業者との打ち合わせに参加していたという明白な問題もありました。そんなことをしていては当然のように労働時間は増加する一方です。

「機械的な作業割り当て」は大手監査法人でも顕著でした。監査は大変な業務だし忙しいのは大いにわかる。しかし機械的に人員を割り当て、機械的に残業している例が本当にたくさんあります。監査というのは基本的にやることは毎年変わらず、突発的なことが起こらない限り極めて標準化された業務です。にもかかわらず、毎年毎年同じように残業し、同じように疲弊して、同じように炎上している。

それには様々な理由があって、多くは会社とトラブルを抱えていることが主な原因です。これはそう簡単には解決できないので、もちろん「監査責任者(主任ではない)」が現場に出向き、問題点を的確に把握し、会社と交渉することが必要でしょう(あまりやっていないように見えましたが笑)。

そしてそれ以外の原因というのは、ほとんど組織側の問題です。閑散期に「前倒し」が全くできていなかったり、社内手続に時間がかかったり、若手が手続を勘違いしていて無駄に時間をかけていたり…

しっかり原因を把握すれば、それに対する対応も可能となります。それには管理者の「先の見通し力」「工夫するマインド」が欠かせません。

そもそも監査法人は「繁忙期」がある反面「閑散期」があるのです。皆、年中忙しいような顔をしていますが、他の業界から見ると勘違いもいいところ。忙しいときは確かに忙しいですが、閑散期はヒマと言ってもいいでしょう。そういう時期に繁忙期のことを想像して「前倒し」をしなければいけない。

目の前にある業務に機械的に手間をかけるのではなく、スケジュールを考え、いかに効果的・効率的に業務を実施していくか。上位者も含めた組織全体の意識改革が欠かせません。

「現実をありのままに受け入れる」というのは思考停止・単なる開き直りであり、工夫が足りないだけです。そのようなやり方をしていては到底仕事は終わらないでしょう。

つづく