サラリーマンを辞める決意。決定的なできごと②-中年の監査法人体験記26-

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大手監査法人4年目。この時点で、現在の監査法人を含め3社勤務。新卒以来のサラリーマン生活は15~16年目になろうとしていました。

前回までの記事の通り、そろそろ独立しよう、と感じていました。

独立して何をやるか、はまだクリアではないけど、とにかく大組織の一員として働くのが窮屈になってきた。

そしてどうしても「上のポジション」が物足りなく感じてしまう。早い話が「自分を上のポジションにしてくれ」ということです笑。思い上がりなんでしょうけど、本当に抑えられない。

そんななか、また「新規案件」を調査することになりました。

監査では、「新規案件」を受注する際、その会社を徹底的に調べます。

その会社を訪問し、この会社が今後監査に耐えうるかを調査するのです。

調査を行い、大丈夫だろうということになれば、監査契約へと進みます。

契約は難しい、という判断も当然あります。会社の体制が整っておらず、決算数値を作ることに著しく困難がある場合は、まだ監査契約は早いのでもう少し先送り、という判断もありえます。

以前の記事に記載した通り、準備が整っていない会社と監査契約すると、けっこうな地獄となります。全く必要もないのに無駄に細かい会計基準を採用して監査を続ける、という作業を延々と続けることになるからです。

以前から個人的に、この監査法人の契約か否かの「判断」が非常にいい加減と感じていました。

その会社がどういう会社なのか、どんな管理体制か、理解が不十分。

ITがよくわかっていないまま、システム部分を検討してしまう。

決算の状況が悪く、企業そのものの継続が難しい状況である。

このようなことがあるにも関わらず強引に契約を進めてしまい、その後、監査チームが大変苦労することになる。

散々手間をかけたあげく、監査続行不能となり、契約解除。これまで費やした時間が無駄になった。こういうことがたくさんありました。

これって、やっているほうは本当にモチベーションが落ちるのです。それはそうですよね。将来無駄になってしまう細かい作業を延々と続けられるほど、人は都合よくできていません。

そういうことが何度もあったので、しっかり調査しなければいけない、と思っていました。極めて当たり前のことですが…

東京CPA会計学院

さて、主任と私の2人で、ある新規案件の「調査」を行っていたのですが、その会社はどう考えても契約が難しいように思えた。業績、管理の面でかなりの困難を抱えているように私には思えました。

私は調査中、主任に「ここは引いた方がいい」と常々言っていました。しかし話が全く伝わらなかった。

主任は「契約する前提」で動いていたため、どんな問題があろうが契約する、というスタンスだったのです。

主任に言ってもらちが明かないと思った私は、案件の責任者、つまりパートナーに「ここは止めたほうがいい」と、メールおよび対面で言いました。

これは極めて異例です笑。ふつうパートナーにそんなことを言うメンバーはいないでしょう。

しかし、私はどうも、パートナー・主任共に、会社をあまり理解していないのではないか、という印象があったために、越権行為になるのを承知で、あえて言いました。

そう言いたくなるくらい、無駄極まりない新規案件での契約解除をすでに経験していたのです。

そしてその新規案件はしばらく放置されていました。

私もあまり触れたくなかったため、触れないようにしていました。

しかし締め切りギリギリのタイミングで、なぜかパートナー判断により「監査契約」となってしまいました。

その案件を進めた主任はすでに退職していました笑。

残された私と他のメンバーは、すでに「契約」が締結された状態で、その会社の監査を進めざるを得なくなりました。

その後の詳細は省略しますが、結局1年近くに及ぶすったもんだの後、続行は不可能と言うことで、契約解除となりました笑。

時間をかけるだけかけて、フィーはほとんどもらえていないので、組織としてはとてつもない損失です。

監査法人のようにトップダウンが強い組織では、このように「明らかに困難なのに、なぜそういう判断に至ったのか」というのをはっきりしないまま、物事を進めてしまうことがあります。案件の振り返りもほとんどしません。

そしてまた似たような炎上を繰り返します。

このようなことが頻発するので、ほとほと呆れていました。まあ、とはいえ組織としては新規契約を取っていかなければいけないので、この受注自体は良しとしましょう(大赤字なので本来はまったくNGなのですが…)。

私が「サラリーマンを諦める」きっかけとなったのは、この案件の中にありました。

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