受験生活はついに7年目、社会人は8年目に突入。
仕事はまあ順調ではありました。役職がつき、給料もそこそこ。当時はそこまでノルマも厳しくなく、普通に達成していました。
かといって営業成績上位トップ10に名前が出るほどかというと、そういうわけではない。
やはり勉強もしているため、仕事に150%取り組めるか、というとそういうわけにはいかない。
私は決して長時間残業したり、大きな案件に徹夜で取り組んだりするタイプではないですし、どちらかというとそういう働き方には否定的ですが、それでも、時と場合によってはそういうモードに入る必要があるのも理解しています。
長い社会人生活では、時に寝食を忘れて仕事に取り組むべき時があるのも事実なのです。
私はそういう仕事は意図的に避けてきました。それはやはり勉強があるから。
そういう仕事を振られそうなときは、巧みに回避してきました笑。
しかしそれが常に正しいとも限りません。仕事というのはどこかで爆発的に取り組まないと、あまり評価もされないし、他人の信用も得られない。
常に淡々とこなしているのがいいわけではないのです。
なので一刻も早く合格し、この二重生活にピリオドを打ちたくなってきた。
仕事に一心不乱に取り組みたかった。
もしくは、いま仕事と勉強でほとんど気が回らなくなっている趣味にも取り組みたかった。ギター、音楽、サッカー、ゲーム。
新しいジャンルも勉強してみたい。さすがに会計士試験の勉強ばかりしているのも飽きてきた。例えば周りに多かった中小企業診断士、そして英語、USCPA…。
仕事と勉強の二重生活も7年目ともなると、本当に焦りが強くなってきます。
要は、どちらも中途半端な感じがして、いてもたってもいられなくなるのです。
30を過ぎ、学生時代の友人は会社でかなりのポジションまで出世している人たちもいたり、自分の事業を始め成功したりしている人もいました。
そんな中自分は中途半端に仕事を行い、会計士試験も「短答合格」という、なんとも中途半端な状況にいる。
日々焦りだけが強くなっていきます。
そして。今年論文試験に不合格であれば、またあの「短答試験」からやり直す必要があるのです。
いわゆる「三振」というやつです。短答合格後、論文に3度不合格で、また短答試験から受ける必要がある、ということ。
科目合格した「企業法」も再度勉強が必要となる。
この恐怖が大変なプレッシャーとなりました。
短答試験は、本当に精神的にきつい。マーク試験ですがかなりの難易度で、さらに時間が圧倒的に足りない。
正直2度と受けたくない試験です。参考記事 公認会計士「短答試験」の恐怖
さて、仕事では主に金融業務を中心に行っていました。
会社の決算を見て、融資判断をしたりコンサル業務をしたり。
この業務では現実の中小企業の決算が、いかに日商簿記や会計理論から離れているのかを知ることができました。
例えば日商簿記で「貸倒引当金」は必ず設定します。
ところがかなりの割合の中小企業は貸倒引当金を見積もっていません。
その必要がないからです。
仮に赤字であれば、税務上の損金にしてもしなくても税金計算上何の影響もないため、やっていない、ということが起こりえます。
他に「減価償却」をやっていない、という会社も散見されました。
日商簿記に精通している人からみたら、「減価償却」をしないなんて、ちょっと信じられないと思うでしょう。
しかし中小企業では割とあります。なぜか。
法人税法では減価償却は「やってもいいよ規定」だからです。裏を返すと「やらなくてもいい」。
減価償却をやらない→黒字が増える→税金が増える。
このため、減価償却をやらなくても何も言われないのです。
(一方でこれが法人税法で求められる「公正な会計慣行」とは言いづらく、やらないことがOKとも断言できないですが…)
赤字になりそうな会社は、減価償却を意図的に行わないことにより、黒字を達成していました。その分税金は払うことになりますが…
ストレートに言ってしまえば「粉飾」ですね。
このようなことがなぜ起こるか。例えば公共事業に参入する会社は、赤字や債務超過だと入札がダメだったりとか、制限があったりするのです。
また赤字だと金融機関への見栄えも決して良くはありません。借入金の返済というは「黒字」部分で行うので、赤字だと返済が難しいとみなされるのです。
そんな背景もあり、「決算書をいじる」動機は普通にあり、それができる環境にもあるため、そういう決算書が出来上がってしまうのです。
会計士の試験を勉強して会計理論にそれなりに詳しくなっていた当時の自分にとって、こういった現実は大きな驚きでした。
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