パートナーはなぜ監査手続「丸投げ」なのか-中年の監査法人体験記28-

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明らかに炎上する案件にチームごと突撃。そしてもちろん炎上。

二転三転する方針。

ついにパートナーを客先で1分間公開説教

これに関し、反省事項は多いです笑。

どのような理由があれ、やはり上司ポジションを説教してはいけない。ましてやお客さんの前で。

至極当たり前のこと。組織人としては許されるものではありません。

かといって後悔しているかといったら、全く後悔していません。

この部署は毎年毎年、同じことで炎上を繰り返していました。原因は大体どの案件も同じで、要はパートナーのグリップが弱いということ。にもかかわらず案件をガンガン進めてしまう。

失敗しても反省しない。失敗案件の振り返りをしているところを見たことが無い。

そしてまた似たような案件で炎上する。

下の者は病んで脱落・退職する。

明らかにパートナー間で「自浄作用」が働いていない。

誰かが言わないと、理解不足のまま、また繰り返す。

そう確信したからこその暴挙でした。

相変わらずパートナーは何も作業をしない。本当に部下に丸投げなのです。手続きもしないし調書作成も一切しない。

これが、他業界から入ってきた私にとって、どうしても理解できないことでした。

通常の案件ならレビューに徹するというのもわかるのですが、本件のように難しい案件であれば、パートナーも自らリーダーシップを取って案件に取り組むべきなのではないでしょうか。パートナーが監査手続をやってはいけないなど、どこにも書いていないのですから。

それをせずに、ひたすらマネージャー以下に作業をやらせているというのが、ど~~~しても理解できません。

パートナーは1つの案件に通常2人います。案件のレビューをするうえで必要な客観的な視点は最上位パートナーが持てばいいこと。

もう1人がレビューに徹する必要はありません。そんな人的余裕もありません。

私は今、大変不肖ながら小規模監査法人のパートナーをしているのですが、当然ながら自ら監査手続を行い、重要な調書を作成しています。仮に組織が大規模になったとしても間違いなく行います。今みたいにがっつりはやらないでしょうけど、間違いなくリスク評価調書等は作り、重要な手続にも参加します。

まあ大手監査法人のパートナーは10社以上のクライアントを抱えているので、他もおろそかにできないし大変だというのはわかります。本件はたくさんある自分のクライアントの1社なのでしょう。

しかし、だからこそ、軽く考えているような気がします。これを辞めてもまあいいか、くらいの感覚なのかもしれない。

しかし作業している方からしてみたら、他のクライアントにも当然時間を取られながら、同時にこの案件に途方もない時間をつぎ込んでいる。

それをあっさりひっくり返されるのはたまったものではない。

だからこそ、スタート時の見極めが大事なのです。

しかしここが永遠に噛み合わない。「契約ありき」の姿勢でリスク評価などほとんどしない。

結局監査法人というのは、パートナーによるパートナーのための組織なのですね。パートナーの意向が全て。パートナー以外というのは、はっきりいってただの作業者なのです。

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もちろん忘れてはいけないのが、クライアントにも大きな負担とご迷惑をかけているということ。まあ監査に関していうと、お互い様の部分もあるのですが。

私がクライアントであれば、間違いなく「最初に何を調査していたんですか?」と言うでしょう。問題点は最初から分かりきっていたことなので。

まあ、この「公開説教」で事実上ここで私の大手監査法人でのキャリアは終わりましたね笑。

さすがにやってはいけないことです。

とはいいながら、実はこの部署、そういった「上司とのバトル」は割と頻繁にあった印象です。

私以上に激しくパートナーとぶつかっているマネージャー以下がいたのも事実です。もちろんぶつかった人はほぼ全員出世していませんでしたが・・・笑

そういう「バトル」、監査法人は他の組織と比べると割と寛容な気もします。もちろん出世には影響しますが、下手すると数年たったら忘れられている可能性すらあります。

それは「ドライ」な組織のいい面でしょう。何かやらかしても、その後しっかり仕事していれば、数年後には何もなかったことになっているという感じがします。

その辺も感じていたので、このまま残るという選択肢もありましたが、さすがに「あと1年で退職しよう」とはっきり思いました。「この1年は独立の準備をしよう」と位置づけ、残された監査法人生活を最大限楽しむようにしました。実際には、この時から1年半残ることになります。

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