「汗水たらして労力を費やす」は美談どころか諸悪の根源-10代・20代への「提言」④ –

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かつて経理に所属していたとき、とてつもなく納得いかないことがありました笑。

この人いつも不満を抱えているなと思うかもしれませんが、まあ聞いてください。

私は新卒で入社した会社で働きながら公認会計士資格を取得しました。

公認会計士試験に合格したときは、いわゆる「現場」で、自称「バリバリ」やっていました。その後、どうやらあいつは公認会計士資格を取ったらしいということを上層部が聞きつけ、私を現場から経理部に異動させたのでした。

私は当初経理をやるつもりは全くなく、現場にずっといたかったので、全く予想もしない経理部に配属されたことは不満でした(とはいえ組織から見ると、会計士資格を持っている社員は経理部に配属したくなるというのもわかります)。

しかし内示が出て、異動が近づくにつれ、だんだん考えを改め、「せっかく会計士資格を取ったからには、経理経験をしておくのも悪くない」と思うようになりました。

そして異動直前はかなりやる気を出し、土日を使って経理マニュアルを読み込んだりしていたほどです。

経理部、予想通り、とてつもなく残業しています。

この部署の問題点は明白でした。

分担が不明確。決算全体スケジュールがよくわからない。役職者がレビューしていない。

まあ経理によくありがちな光景です笑。

あまり自慢するつもりはないのですが(こう書くときは大体自慢ですが笑)、私は異動後早々にこの問題点を把握し、上役と共に、決算書作成・公表というゴールを見据えたスケジュールや分担等を作成しました。

ちなみにこの分担、上手く行かないことも非常に多かった。経理部に長くいる「重鎮」がなかなか動かないというのもあり…

初めての経理と言っても、私はアドバンテージが3つありました。まず経理部員が誰も持っていない公認会計士資格を持っていること。さらにこの会社にすでに10年勤務しており、現場に精通していること。経理部メンバーはほとんど異動したことが無く経理オンリーでキャリアを積んでいる人が大半でした。さらにこれをアドバンテージと言っていいのかどうかはわかりませんが、平社員ではなくそれなりの役職もあったため、割と意見も言いやすかった。

そもそも人事が私を異動させたのも、経理部の改革に取り組んでほしいという意向があったからでした。

私は経理未経験ながら、最初からスタートダッシュで業務改革に取り組むことができたと思います。

当初の予想通り、とにかくスケジューリングがいい加減で、また各担当の業務は属人化しており、全体を統括する役職者も「重鎮」にはコントロールが効かない状態。

これらを、完全に改めることはできませんでしたが、相当程度改善することができたと思います。

決算の後、税務作業も行うことになります。ここは普通の株式会社ではないので相当複雑な税務処理を行うことになります。

詳細は割愛しますが、税務作業も極めて非効率なやり方を取っていたものを大幅に改めました。さらに消費税の申告方式を改め、税額を前年に比べて大きく減少させました(ここは極めて珍しいことに課税売上・非課税売上・不課税売上が毎期同じ額くらいありました。そのような会社は他に見たことがありません)。

さらに過年度の重大な申告ミス等について、税務署のある部署(普通とはちょっと違う部門)とやり取りしたりしていました。

で、大変申し訳ないのですが、我ながらいい感じで仕事ができている、と思っていましたし、部長もそのように言ってくれました。

私は、こういった全体業務や専門業務をやっていたため、「経理入力業務」はほんの少ししかやっていませんでした。

半年ほど過ぎると、なんと他の重鎮メンバーから「彼は経理入力業務をやっていない」「ほかの人と比べて働いていないように見える」という声が上がったのです!

これは本当に衝撃でした。

確かに私は以前と同じように残業もほとんどしないし、入力業務もちょっとしかやっていません。

ですが誰でもできるわけではない申告業務をやっていますし、そもそも決算作業を標準化するという業務をこなしていたのです。

にもかかわらずこのような声があがったということが、非常にショックでした笑。

まあなんとなく理解はできます。いきなり他の部署からやってきたあんちゃんが偉そうに(していたつもりはないですが)いろいろ業務に口出しをして、部長といろいろ話している。しかも入力業務はやっていない。そのあたりが気に入らなかったのでしょう。

今であればもう少しうまくふるまうかもしれません笑。

しかしこういう「汗水たらしていない=働いていない」という考え方は、即刻改めるべきだと思います。

全てとは言いませんが、特に伝統的な会社では「汗水たらして地道に」仕事をすることを強要します。

手間を削減したり新しいツールを導入したりする仕事を全く評価しない。

なぜ評価しないかというと、自分が理解できないし、自分の価値が損なわれるような気がするから。

この発想はとんでもない組織停滞の原因となります。

要は単なる思考停止です。

組織ではこのようなことはよくあります。経理のようなルーティン業務が多い部署にこれまで長くいるメンバーは、自分の仕事に過度に愛着を持ちすぎていることがあります。そして機械的に行う作業にやたら時間をかけることを重視し、他人にそれを強制することがあります。

若い世代は、決してそんな考え方に染まってはいけません。この考え方を改めるのは本当に難しいですが、是非じわじわと変えていってほしいと思います。

ちなみにこの後どうなったかというと、上司もかばってくれず、しっかり入力業務や書類保管業務等を割り当てられたのでした笑。まあそれ自体はいい経験にはなりました。

しかし業務改革を行っていたのにほとんど評価されず、追加で他の業務を割り当てられるということはかなりのショックであり、愛着多いこの会社を離れる大きなきっかけとなりました(まあこのタイミングで転職したのは後から考えるとベストだったため、結果オーライです)。

このときの反省点は、直属上司と対立とまではいかないものの、わかりあえていなかったことですね。過年度申告の件でだいぶ熱い議論になったこともあった。その影響でちょっとぎくしゃく感があったのは否めません。

まとめ

  • 組織ではひたすら時間をかけて作業をすることを良しとする考え方がある
  • 自分たちが理解できない作業をしている者を見ると、自分たちと同じことをさせようという力が働くことがある
  • 結果、同じ作業をやるしかないことが多い笑。しかし常に改革を考え続けてほしい
  • 上司を味方にしておかないと無理ゲーとなることが多い笑。

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