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私は前回の記事でも書いた通り、当初「監査」をやるつもりはありませんでした。
もともと公認会計士の資格を目指したのも、パンフレットや書籍なんかに「財務・会計を中心とした幅広い業務を専門的に行うことができる」とあり、この点に非常に惹かれたからです。
会計士の幅広い業務の一つとして、「監査」がある、というイメージを持っていました。
試験合格時は事業会社にいたこともあり、そのときも監査をやるつもりはありませんでした。
監査をやりたい!という思いはほぼ無かった。
まず、受験生の立場から見て、監査論という科目を通して勉強する監査のイメージが、どうもエキサイティングでない笑。
いろいろな手続きをやって、監査意見を出す、というのはわかるのですが、それって面白いの?というのが率直な印象でした。
さらに、監査法人勤務者からも「監査つまんねえ~」のような話を何度も聞いていました。「監査おもしれえ~」と心から言っている人には、おそらく会ったことがありません笑。
よって、当初私は「公認会計士(合格者)は、別に監査をやる必要はない」という意見でした。
しかし今は変わりました。今は「公認会計士(合格者)は、可能な限り監査をやっておいた方がいい(短期か長期かはともかく)」という意見です。
別に長くやる必要はありませんが、やはりどこかで経験しておいた方が、間違いなく仕事の幅が広がると思うのです。
かつての私のような、試験合格者の「監査食わず嫌い派」を想定し、監査を経験するメリットを記したいと思います。
- リスク感覚が身につく
- 監査はなんだかんだで会計士業務の根幹(次回)
- 試験で勉強したことのほぼ全てを使う(次回)
リスク感覚が身につく
これだけ聞くとピンとこないかもしれませんが、これは非常に大きいです。
監査を経験する前の私は、基本的に何事も考えが足りないまま突撃するタイプでした笑。
プライベートにしても仕事にしても、先の展開、特に失敗したときのシナリオをよく考えず、とりあえず突撃して、上手く行くときは上手く行く。失敗するときは派手に失敗する、という感じでした。
これに関しては、失敗も貴重な人生経験だし、問題ないのでは、という意見もあろうかと思います。
しかし、より仕事の幅を広げるためにはこれだけではダメだと思いました。
監査をするようになって、性格的に間違いなく慎重になったと思います。なぜかというと、監査というのは「リスク評価」が命だからです。
会社にどのようなリスクがあり、どのような粉飾が想定されるか。これをしっかり考える必要があります。そして想定されるリスクに応じてリソースを投入しなければいけないのです。
そういう環境にいると、例えば会社がこれまでと全く違う新規事業を計画している時、「とてもリスクが高い」「新規事業で粉飾が起こるかもしれない」という発想をするようになります。これって、会計士としてみると普通なんですが、会社からみると、「リスクばっかり見やがって」と残念に思うのではないでしょうか。
監査をする会計士というのは、リスク評価を重視しているので、結果的に「リスク回避的」になりがちなんですよね。監査法人にいる会計士が、やたら大人しく見える人が多いのもそのためだと思います。
しかしビジネスというのはリスクを取るもの。そういう世界にいる人たちから見ると、会計士の考え方は違和感があるでしょう。よく会社が「会計士がわかってくれない」と批判するのもこのあたりが影響していると思います。
かといって、「リスク評価」「リスク回避」的な発想が、社会において必要ないかと言ったら、違うと思います。むしろリスクを取るからこそ、リスク評価の発想が必要だと思います。
よって、いつか事業をしたい(つまりリスクを取りたい)、と思っているような人も、監査をして、リスク評価の発想を身に付けるのは、大事だと思います。
やはり突撃するだけではいつか失敗するのです。まずは慎重にリスクを評価してあらゆるリスクを想定する、その上で一か八かの大勝負をする、ということが大事なのだと思います。
私自身も、この数年で本当に慎重というか、仕事で何かやる前にいろいろなことを想定するようになりました。「リスク評価」は、プライベートはともかく、ビジネスをやるうえでは、絶対に持っておいた方がいい感覚だと思います。
よって、監査がどうもつまらないなあと思っている人も、会計監査ではリスク感覚を身に付ける場だ、という風に考えればよいのではないかと思います。
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