コロナ禍の期末監査②監査に意外と影響ない?むしろスムーズ?-中年の監査法人体験記36-

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2020年4月。緊急事態宣言真っただ中。

このときはまだコロナについて正確な情報が少なく、外出すら危険な雰囲気が漂っていました。

監査法人はオフィスへの出勤は許可制。事前に申請する必要があり、実質的に出勤禁止でした。もちろんそれはクライアント側も同じ。こういう状況なので「期末監査であっても来てくれるな」ということでした。

つまり、完全リモート化での期末監査ということになりました。

4月の初旬ごろは、リモートでの環境に双方戸惑いが多く、なかなかスムーズにいきませんでした。

しかし中旬以降、だんだん慣れも出てきて、資料のやり取り等もそれほど困らないようになっていきました。むしろリモート監査のメリットもたくさん感じ始めました。

このときの大規模チームの管理者が非常に仕切り上手で、監査チームとクライアント双方を的確にマネジメントできていたことも見逃せません。やはり仕事というのはマネジメントによってだいぶ違うと思います。

コロナによるリモート環境下での監査。いい面と悪い面を双方書いていきたいと思います。

良い面

時間を効率的に使える

これは非常に大きいです。期末監査といっても通常、複数の会社を担当します(私はこのとき3社)。コロナ前のやり方だと、4月は朝から晩まである会社に行って、ひたすらその会社の調書を作ったり会社の人と話したり資料をやり取りしたり(夜飲みに行ったり)、ということが一般的でした。そして仮にその日の作業が早めに終わっても、別の案件の作業をすることはかなり難しかったです。なぜなら、現場に、そのチームの現場責任者がいることが多いから。その会社の現場責任者の前で、あからさまに別の作業をやるのはハードルが高いです笑。自分が現場責任者になってみるとわかりますが、「別のジョブは止めてくれ」と言いたくなる。要は現場責任者のメンツをつぶしてしまうのです(気にしない人もいますが)。

しかしリモート監査だとそれは全く気にする必要がないですから、時間を3等分して自分のそれぞれのジョブに充てたりすることも可能です。

この面においては、以前より非常に効率的になったのではないかと思います。

資料依頼等のさらなる効率化

大手監査法人はセキュリティが強力な独自のオンラインストレージを持っていますので、安心してクライアントと資料のやり取りができます(セキュリティが強すぎるあまり少し不便な面もありますが)。このシステムをしっかり使い、クライアントと状況を共有することで必要資料ステータス等が以前よりもはるかにわかりやすくなり、結果として効率が良くなったような気がします。監査はクライアントとの資料やり取りとその管理が命。これが効率化されたのは本当に大きいです。これはコロナ以前でもやろうと思えばできたことですが、強制的なリモート環境下、一段とこの意識が進んだように思います。もちろん定期的にクライアントとオンラインミーティングをして進捗管理することは欠かせません。

他には、当たり前ですが会社に行く必要がないことによる疲労軽減等も大きなメリットです。以前は毎日毎日朝から晩まで往査していたため本当に疲労が大きかったですね…。

東京CPA会計学院

悪い面

会社とのコミュニケーションが難しい。一歩間違えると大きなトラブル…

オンラインより対面のほうが意図が伝わりやすい、というのは間違いないと思います。どんなに念入りに、ていねいに説明したとしても、メールだと機械的に見えたり、皮肉にとられたり、思わぬ解釈をされてしまうことがあります。特に監査は追加で様々な資料を依頼したり、場合によっては会計処理の訂正を求めたりなど、クライアントにとって負担になることを依頼する立場。さらに初のコロナ環境でクライアントも少しイライラ。その結果ちょっとしたトラブルや口論になったこともかなりあります。ある会社のCFOに怒鳴られたときはちょっと凹みました笑。

新人教育が非常に難しい

これ、非常に大変です。やはり新人というのは横にいてもらって、何か困っているそぶりがあったら声をかけたりしたいもの。そもそもリモートワークというのはある程度仕事ができることが前提だと思います。全く分からない新人に期末監査に参加してもらうのは相当ハードルが高いでしょう。しかしこのとき、チームは非常に幸運でした。私が社会人人生で見た中で間違いなく最高レベルの新人がチームに入ってきたのです。教えなくてもなぜかほとんどできる。この会社は以前新人の私が「プチ心の病」になるほど苦しんだ難しい会社でした。もちろん当時よりも状況は改善しているのですが、それでも難なく仕事を片付けていく新人を見て、できるやつはできるのだなあと思いました笑。

あとは当然ながら会社の現場に訪問できないことによる「つまらなさ」。これ新人にとっては非常に辛い事態だと思います。会社の人と直接話し、工場や支店等を見学することが非常に重要ですし、それが数字に跳ね返ってくることを理解するという面白さにもつながるのですから。

全体としてみると、コロナ影響は、効率性の面で非常にポジティブ、メンタルやコミュニケーションの面でネガティブ、ということになると思います。まあどの業種も同じですかね笑

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