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さて、ここまでの10回で公認会計士試験への基本的な取り組み方を見てきました。
ここからは個別科目攻略法について考えていきたいと思います。
- 財務会計論…もちろん最重要科目。
- 管理会計論…重要科目。しかし難しい…
- 監査論…公認会計士として必須の知識。想像力が必要
- 企業法…好き嫌いが分かれるはず。淡々と取り組む
- 租税法…実務においても大事。苦手にしない
- 経営学…ファイナンスを頑張る。理論はそこそこで
財務会計論の学習法
公認会計士を志す以上、「会計学」にはほぼ全受験生が興味あるはずです。会計学というのは「財務会計論」「管理会計論」。その二つのうちでも、財務会計論はほぼ全受講生が興味を持って勉強に取り組む科目となります。
当然ながら合格後実務をやっていくうえで非常に重要。例えば仮に監査業界に進むとして、連結会計が全くわからないのでは話になりません。監査法人に入れば誰もが大規模連結会社の監査をする可能性が高いからです。
またM&Aの業界に進むとして、公認会計士としては、当然ながら企業結合・事業分離の会計基準に精通している必要があります。それでも足りず、組織再編税制なども熟知しておく必要があるでしょう。
ということで、気合を入れて勉強すべきなのが、この財務会計論となります。
財務会計論はまず、短答・論文共に配点が高い。短答は他科目の2倍。論文も1.5倍の配点となっています。
さらに上記の通り全受講生が良く勉強していますので非常にレベルが高い戦いになり、学習量の差がモロに出て差を付けられてしまう科目となります。
このように大事な財務会計論、次のような視点で考えていきたいと思います。
- 短答では計算力重視(素早い計算力)、論文では理論重視(もちろんどちらか一方ではない)
- 【計算】膨大のように見えるが、基本構造は単純
- 【計算】基礎をマスターした後、連結・企業結合/事業分離・CF計算書に取り組む
- 【理論】計算の知識が前提。なぜその処理が必要か考える。「会計基準」を見るのはマスト
短答では計算力重視(素早い計算力)、論文では理論重視(もちろんどちらか一方ではない)
財務会計論は、かつては「簿記」と「財務諸表論」として2つの試験科目でしたが、試験制度改正により1つの科目となりました。
その結果、かつてはよく見られた「簿記の総合問題」が減少傾向にあります。
簿記の総合問題とは、膨大な仕訳をして、それを集計して、決算書を作る問題。
連結会計の総合問題など、問題文だけで5~6ページくらいある超大作もよくありました。
しかし近年の試験は「応用力・現場力」重視のもと、いわゆる「計算マシーン」からの脱却を志向しているように見えます。
その結果、ベテラン講師に言わせれば「計算に関していうと日商簿記1級よりも簡単になっている」ようです。
それは「簿記の総合問題」がほぼ無くなってきている、ということが大きな要因です。
もちろん問題全体が簡単になったわけではなく、理論との複合的な問題が多くなり、出題意図が読みづらく、答えづらい問題が増えてきているということが言えます。
そういう意味で、計算に関しては、短答試験の最後の方において必ず出題される総合問題(連結会計が多い)が解けるレベルが、まずは目標なのではないかと思います。
ということで、まずは短答試験の計算問題が取れるようになるまで、計算力をひたすら磨いていくのが大事です。
あわせて短答試験で出題される理論の選択肢も確実に押さえる。
そして無事短答を突破したら、もちろん計算練習は継続する必要がありますが、理論をしっかり書けることに重心をシフトしていく。
そういう大方針となるでしょう。
ちなみに日商簿記1級を取得したほうがいいかどうかとよく聞かれますが、私は会計士試験のためには必要ないと答えます。上記の通り特に最近、両者の試験傾向がかなり異なってきています。以前は日商簿記1級→会計士というルートは割と一般的でしたが、最近はむしろ1級の試験を受けることは寄り道にすら思えます。
とはいえ、もちろん余裕があるのであれば受けたほういいでしょう。実力試しになりますし、日商簿記1級というのは世間からも非常に価値が高い資格とされています。そのような資格は今後のためにも持っておくにこしたことは有りませんからね。日商簿記1級は、そういうリスクヘッジ的な位置づけだと思います。
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