財務会計論の学習法2-社会人が公認会計士試験に合格するために必要なこと⑫-

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財務会計論の学習法2回目です!

  • 短答では計算力重視(素早い計算力)、論文では理論重視(もちろんどちらか一方ではない)(前回)
  • 【計算】膨大のように見えるが、基本構造は単純
  • 【計算】基礎をマスターした後、連結・企業結合/事業分離・CF計算書に取り組む
  • 【理論】計算の知識が前提。なぜその処理が必要か考える。「会計基準」を見るのはマスト(次回)

【計算】膨大のように見えるが、基本構造は単純

計算(簿記)は非常に膨大です。どの予備校でも基礎テキストや問題集だけで何十冊と用意されているでしょう。

簿記はどの受講生にとっても面白い(はず)ですが、一方であまりの広さに学習指針を見失いがち。

とはいっても簿記の一番大事なのは次の「流れ」なのではないでしょうか。

仕訳→転記(元帳)→試算表→決算整理仕訳→決算整理後試算表→精算表→決算書(BS/PL/SS)

この流れは、必ずしっかり理解する必要があります。

理解するということは、ある仕訳をすると、それが各フェーズでどのように記録されていくか、瞬時に理解できるという意味です。

といってもそんなに大げさな話ではありません。

上は7つほどフェーズを書きましたが、基本的には

仕訳→転記(元帳)→試算表

これだけです。その先は実質的に同じことを、名前を変えて繰り返しているにすぎません。

上記に付随して補助簿(商品有高帳とか固定資産台帳とか)が出てきますが、文字通り上記の流れを「補助」しているだけにすぎません。枝葉の論点ですね。

そしてこの基本的な流れは日商簿記3級で学習する内容ですね。つまり学習の骨格は3級レベルのまま今後も基本的に変わりません

簿記の範囲が膨大と言っても、やっていることは基本ずっと同じなのです。

税効果だろうが資産除去債務だろうがリースだろうが退職給付だろうが小難しい論点も、上記の流れとまったく同じことを繰り返しているだけ。つまり最初の仕訳を切るのが難しくなっていくだけで、後は同じことをひたすらやっているのです。

こう考えると楽になるはず。仕訳が難しいからと言って全体を判断してしまうのは早すぎる。仕訳はいつか覚えるのですから。

まずは仕訳を切った後、それがどう元帳に反映され、さらにどう決算書に反映されるのか、しっかり理解することが大事です。

基本的なことですが元帳(総勘定元帳)の記入方法・見方も重要です。元帳は3級学習内容ですが、相手勘定の記入方法はイメージと逆になったりします。元帳を見て、瞬時にどんな仕訳がされたかが理解できるのが理想です。そうしないと原価計算の複雑な勘定の動きがわからなくなってしまいます。

この流れをマスターしたら、後はひたすら項目ごとに仕訳を完璧に覚えるのみ。繰り返しが全てです。

1回やったくらいで、退職給付会計とか税効果とか覚えることは絶対にありません。繰り返しあるのみ。

【計算】基礎をマスターした後、連結・企業結合/事業分離・CF計算書に取り組む

そして応用論点として、この基本的な流れと大きく異なるジャンルは3つしかありません。それは

キャッシュ・フロー計算書

連結会計

企業結合・事業分離会計

です。これらの3つは基礎を固めたうえでの応用論点なので、基礎を固めたうえで個別に取り組むべきでしょう。

キャッシュ・フロー計算書は、これまでせっかく発生主義で作っていたPLを、現金主義に戻して表示しているようなイメージですね。直説法・間接法ともに短答論文、それから実務でもそのまま非常に重要となってきますので、しっかり押さえましょう。そして連結会計習得後、連結キャッシュ・フロー計算書もマスターする必要があります。

連結会計は、これだけで講義が20コマ以上ある、非常に重要な論点です。連結会計ではこれまでと「視点」を変える必要がありますね。これまでは「親会社」または「単体」の立場で仕訳をしていました。仮に子会社を設立したのであれば「子会社株式100/現預金100」と仕訳しますが、これは「子会社に100現預金を渡し、100の株式を受け取った」という親会社目線です。ちなみに子会社では「現預金100/資本金100」となりますね。しかし連結会計では、親子合算した「連結目線」で考えるので、「資本金100/子会社株式100」とする必要があります。

上記例は簡単なのですが、取引を重ねるにつれだんだん混乱して、何をしているかわからなくなってしまうので、最初に戻り何度も何度も繰り返す必要があります。また一度に理解できずとも落ち込む必要はありません。それくらい頭の切り替えが必要になってくる分野です。

連結会計というのは、親会社(子会社)の延長の仕訳をしているのではなく、親会社と子会社の単純合算をした後の仕訳をしている、ということを常に忘れないようにしましょう。くれぐれも、親会社とは違う決算書を作っていると考えることが大事です。

連結会計は、基本論点を習得後に、応用論点としても非常に多くの学習事項があるため、連結全体をマスターするのに相当時間がかかります。とはいえ連結がわからない会計士などいませんので、マスター必須となる分野です。

企業結合・事業分離会計は、要するにM&Aの会計処理です。これは連結会計の理解を基礎とし、単体の処理と連結の処理双方を覚える必要があります。パターンが非常に多くあり、暗記と理解の双方が要求される非常に難解な分野だと思います。しかし同時にかなり面白い分野でもあり、この分野に強い会計士は間違いなく重宝されるので、頑張って取り組んでほしいところです。

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